病を水に流せるか?

利き手でない左手の機能向上に
努めている。
左手をもっと繊細にしたい。
まあ主に楽器演奏が目的だが…

石川さんは79歳の男性。
趣味は渓流釣り、麻雀、水墨画
晩酌も毎日する。

若い頃は会社を経営していた。
イケイケだったそうだ。
徹夜麻雀を3日続けたこともある。
毎日ウイスキーはボトル1本。

本人いわく
「滅茶苦茶してましたよ」

そんな生活が影響したのか。
50代のときに脳卒中を発症した。
右半身の麻痺は今も強く残っている。

バリバリやっていた人ほど
自暴自棄になる。
しかし、石川さんは逆だった。
「まあしゃあない」
と開き直った。

クヨクヨする、という言葉は
石川さんの辞書にはない。

渓流釣りは奥さんが同行し、
餌つけ係を担当している。
最初は虫が苦手だった奥さん。
今は、ミミズもゴカイも楽勝だ。

「卒中やったお陰でむしろ、
前より色々やってません?」
「そうかもしれませんね」
ガハハと笑う石井さん。

済んだことは忘れる。
病も水に流す。
はい次、はい次。
川の流れのように…

へこたれない患者さんから
学ぶことは無限だ。

死に損なう

早い話が
死にかけるのも悪くない
ということだ。

関口さんは82歳の女性。
一昨年末に死にかけた。

来院したとき、真っ黄色だった。
腹痛と発熱もあった。
血圧も下がっていた。
軽いショック状態だった。

「急性胆管炎」と診断。

コネのある消化器内科へ紹介した。
入院治療で九死に一生を得た。

おデブさんだった関口さん。
退院後「ポッチャリ」に変身した。

死ぬ思いをしたのだ。
頑張るつもりはサラサラない。
悔いなきよう楽しむ。

もちろん同じ目には遭いたくない。
1時間4千円のスポーツトレーナー、
週4回の麻雀、週末は絵も習っている。
本人いわく「遊び代」に
月10万円使っているそうだ。

素晴らしいと思う。
できる人はやればいいと思う。

減量にも成功し、生活習慣病も
勝手に改善した。
残りの人生せいぜい価値あるものに
おカネをつぎ込んでほしい。

「全部使い切って死んで下さい」
最大限のエールを送った。

死ぬほどの病で死に損ねる。
望んでできるものではないが、
瀕死も「生」のスパイスになる。