おカネのチカラ

蕎麦屋で働く佐藤さん47歳。
糖尿病と高脂血症と高血圧。
生活習慣病のデパートだ。


見た目通り、人が良くて
のんびりしている。
友人の蕎麦屋を手伝っている。
深夜営業が中心だ。
断りきれないのだ。

両親も当院の患者さんなので、
息子を任されている手前もある。
余計、倒れられては困る。

受診も滞りがちだ。
病識があまりにも乏しい。
前回、心がける習慣を
紙に書いて手渡した。

「これを家の冷蔵庫に貼って
口に出して、毎日読み上げて!」
「はい、わかりました」

返事は良い…

用を足しにトイレに行ったとき、
斎藤さんに手渡した紙の忘れ物を
見つけてガッカリした。

今回相変わらずの風貌で外来受診。
「口ぐせ唱えてる?」
と訊くと、
「はい、毎日言ってます」
と嘘をつく。

今回はいつもに増して、
「のれんに腕押し」だ。
訊いてみた。

「何かええことあったん?」
「有馬とったんです」

競馬の有馬記念だ。
「なんぼ?」
「50万ほど勝ったんですよ!
母ちゃんに半分取られたけど」


そりゃあご機嫌なはずだ。
でも「あっ」で無くなるだろう…

茅野さんは76歳女性。
眼の手術がうまくいかなかった。
外来受診の度に愚痴る。

今回も同じように愚痴るだろう。
先手を打って、眼科医の替え方、
受診の仕方を色々と指南した。

これまた何となく「ぬかに釘」だ。
いつもよりご機嫌なのだ。

「何かええことあったん?」
「宝くじ当たったの」
「なんぼ?」
「70万円!」


病は現金で消える!
次の書籍のタイトルにしようか?

卒中ギタリスト

小川さんは58歳男性。
糖尿病と高血圧の持病がある。
会社を経営していてストレスは多い。
酒とタバコもなかなか止められない。

先日小川さんの母親が急死した。
母の葬儀中に呂律が回らなくなった。
近所で受診したが問題なしと帰宅。

翌日当院受診。
手足の麻痺はなく、呂律異常も軽度。
だが、違和感があるので精査した。
やはり脳梗塞があった。

一週間後、退院報告に来てくれた。
ほぼ元通りの小川さんだった。
「助かりました」
「お母ちゃん一人で逝くの
寂しかったんですかね?」

苦笑いする小川さん。

小川さんの趣味はギター。
外来ではソウルミュージックの
オタクトークに花が咲く。
やはり若干いつものキレがない。
母の死と卒中のダブルショックか…

「ギターは?」
「全然問題なく弾けるんですよ」
「よかったあ!」
「実は一本買っちゃったんですよ!」
「ナイス!」


この辺がミュージシャンの良いところだ。
「心機一転」できる!
呂律が回らない?
ギターでしゃべればいい!

インフルエンザ様

「冬は忙しいでしょ?」
「”かきいれ時” ですからね」

往診患者さんを前に、
不謹慎な物言いを反省…

寒くなると血圧も上がる。
外出も減り、食事量が増える。
太ると血糖値も上がる。

脳卒中や心筋梗塞も増える。

特に、呼吸器感染症だ。
風邪に始まり、気管支炎、肺炎。
最近は年がら年中の印象もあるが、

やはり冬は風邪が多い。

日本は「インフルエンザ大国」と
揶揄される。

大げさに取り扱い過ぎだ、と。

よく言えば、他人に迷惑を
かけないように心がける

文化・風習と言えなくもない。

39度に発熱した患者さんが来る。
インフルエンザ検査をする。
「検査結果は陰性です」

「よかったあ!」

逆だ…
インフルではないのに39度!?

熱が出る病はゴマンとある。
エボラ出血熱だったらどうする?
インフルなら2~3日で治るけど。
治療法のない感染症や

未知のウイルスだったら?

このまま死ぬまで39度だったら?

確率は極めて低いが…

いずれにしても冬は忙しい。
既に風邪は多く、連日満員だ。
ウイルスも医療機関の経済には

貢献している。

またまた不謹慎と叱られるか…

うちの診療所は自分を含め、
全員が従業員。
多忙でもインセンティブなし。
それでも楽しく仕事をする
全スタッフが誇らしい。