頭が割れるように痛い

「最近頭痛があるんです」

今村さん(60歳、女性)は訴えた。

もともと健康な女性だ。
身体所見は全く問題なし。

自覚としての頭痛があるだけ。

経験上、心配いらない頭痛だ。

「秋頃まで様子みましょう」

提案に対し、今村さんは訊いてきた。

「MRI検査しなくていいですか?」

悩ましい質問だ。
はっきり言って必要ない。

少なくとも今回の頭痛に関しては。

但し今回の頭痛と関係ない病気が
見つかる可能性はわからない。

脳腫瘍、動脈瘤、小さな梗塞…

「ヤブヘビ」というやつだ。

今回見つけるべきものではない。

これは検査全般に言えることだ。
検査は常に好ましいわけではない。

検査に治療効果はないのだから。

早期発見が目的なら毎年検査を
受ける必要がある。
それはそれで意味はあるだろうが、

別の話だ。

結局、様子を見ることになった。
なんだかんだ話しているうちに

今村さんの頭痛は消えていた。

まあそんなもんだ。

「ところで息子どう?」

以前、息子も頭痛で通院していた。

「会社辞めて頭痛治りました」

「よかったねえ」

今村さんは苦笑いしながら、

「ニートよ。それが頭痛の種かも…」

消えていた今村さんの頭痛が

復活した。

まあそんなもんだ。

とにかく検査は延期してよかった。
頭痛の種が増えなくてよかった。

つなぐのは血?点滴?

「先生、点滴してくれない?」

立石さん(81歳女性)は頭痛で来院した。
めまいで行う点滴で味をしめた。
頭痛ごときで点滴してられない。
「だめ」

3年前に夫を亡くした立石さん。
しばらく空気の抜けた風船状態だった。
ずっと会話も上の空。

最近ようやく冗談も通じるようになった。

立石さんは夫の姉と二人で暮らしている。
「イジワルな義姉」らしい。

外来ではずっと愚痴だらけだった。

立石さんは20代で寿司屋に嫁いだ。
家には義父母、義姉、義弟がいた。
義弟は後妻の連れ子だった。
戦中・戦後ではよくある話だ。

今の20代女子なら嫁ぐのを拒むだろう。

立石さんは寿司屋を手伝い、介護もした。
夫亡きあと、義姉と二人になった。
血の繋がらない姉との生活が始まる。
悲しみ、不安、不満、混在しただろう。

うつ状態になるのも理解できる。

立石さんが人生で最も長く過ごす相手。

それが義姉なのだから!

一緒に暮らし、今年60年目に突入。

夫婦なら「ダイヤモンド婚」だ!

立石さんは不定愁訴が相変わらず多い。
しかし、最近少し変化が出てきた。
「義姉が診療所行って来いだって」
いつもと風向きも表情も違う。
頭痛でもめまいでも何となく明るい。
なるほど!
義姉との関係性が変化したのだ!
そういえば最近悪口も少ない。

人間には「情」が存在する。
真の「家族」になったのかもしれない。
血のつながりがないだけの話だ。
訊いてみた。
「義姉さん死んだら泣くでしょ?」
「そりゃそうよ」
「OK!点滴したげる」
適応外だが、点滴してあげることにした。