真のツッコミになるために


大野さんのお姉さんは認知症だ。
しっかり者のお姉さんだったらしい。
もうすぐ自分の顔も忘れるのでは?
大野さんの顔は寂しげだ。

自分に置き換えてみる。
自分の妹が?自分の弟が?
まだなかなか臨場感を持てない。

「おいくつなんですか?」
「88歳なのよ」
「死の恐怖も忘れてるかもね。
それは幸運ですよ」


「旦那の顔も忘れることが多いそうよ」
「出会った頃の新鮮さが保てる!
毎日初恋じゃないですか!」


近い将来認知症患者は800万人まで
増えると試算されている。
ツッコミも最低800万人必要だ!
医者は30万人しかいない。
全然足りないではないか!

悲劇として生きるか?
喜劇として生きるか?

「記憶」は残らないかもしれない。
しかし「気分」は残る。
気分を大切に生きると決めたら
毎日リセットできる認知症も
捨てたもんじゃない。


認知症になろうと、介護する側になろうと
一回こっきりの人生。
残された人生を全うするしかない。

認知症にならない方法?
そんなことに執心するより、
いつもいい気分でいられる工夫を!

勝手アルツハイマー

喫煙は認知症のリスクになるそうだ。
今さら、最近の新聞に載っていた。
各種がん、COPD、心臓病、胃潰瘍…
喫煙と無関係な病を探す方が困難だ。
世の中の「喫煙者イジメ」は止まらない。

「因果関係」と「相関関係」の混同
について指摘したいが、止めとく。
「逆にそれってメリットでは?」
と思ったからだ。

作家の筒井康隆(85)が対談で、
「死の恐怖や苦痛から逃れようとすれば、
ボケなきゃ仕方がない」

と言っていた。

酒や、タバコ、カフェイン、すべからく
「嗜好薬物」には意識変容作用がある。
だからストレス解消になるわけだ。

強烈過ぎる意識変容を起こす薬物が
違法認定されている。
ざっくり、そう認識している。

ストレスを忘れる、つまり「健忘」は
「生存」に必要な能力だ。
死の年齢が近づく老人にとって、
「健忘」能力は益々重要になるのでは?
認知症も幸福の一種だ。


タバコを吸うときぐらい、
「認知症?カモン!」
で喫煙すればいい。
ただし、マナーは守りましょう。

『勝手アルツハイマー』
日野武道研究所の主宰であり、明鏡塾の
塾長である日野晃先生考案の病名だ。
都合の悪いことだけ、都合よく忘れる。

それができたら人生最高なのだが…

相性抜群

鈴木さんは92歳女性。
鈴木さんの長女が外来受診した。

以前、鈴木さんの在宅診療をしていた。
転倒、入院をきっかけに在宅介護が
困難になり、特養に入所している。
入所後、すこぶる快調らしい。
認知症もむしろ改善している。

「こんなによくしてくれるけど、
ここおカネ大丈夫なの?」
「大丈夫よ。お母さんの貯金で
十分やれてるから」

と答える娘に母は上機嫌だ。

安心した主治医は
「どこ入ったんだっけ?」
と長女に訊いた。

「〇〇園です」
「…」

一瞬無言になってしまうところが
まだまだ修行が足りていない。

3姉妹の長女で機転が効く。
一瞬の間を見逃さない。
「入る前にケアマネにも言われました。
評判良くないって」


問題が多い特養だった。
入所者の介護が杜撰すぎた。
直接、苦情を伝えたこともあった。
行政から指導が入ったこともあった。

介護施設はどこも同じく人手不足だ。
介護理念だけではどうしようもない
部分もある。

こちらとしても「イジメ」がしたいわけ
ではない。

しかし、今回先入観はくつがえった。

在宅の頃、ご本人から聴いた話だ。

戦後、満州から命からがら引き揚げた。
船の上で死んだ子供も何人もいた。
亡夫が俳優並のハンサムだった。


そんな話をスタッフにもしている
のかもしれない。
鈴木さんは明るく、愛される性格だ。

そして何より3姉妹だ。
さすがにこのお母さんの娘。
みな処世に長けている。

3姉妹のチームワークがスタッフに
いい意味でプレッシャーを
与えているのは想像に容易だ。


断言する。

最初からプロはいない。
教育してあげればうまくなる。
当たり前だが関係性は受け身ではない。
「相性」も育てられるものなのだ。


自らの先入観に自戒を込めて…