医者の態度

井上さんは80歳女性。
リコーダーの先生をしている。
非常に珍しい歯肉癌を患った。

都内の某有名病院で手術を受け、
全部取ることができた。
術後、定期通院している。

大病院にありがちだが、
担当医が頻繁に変わる。
今回から若い医師が担当に。
態度が非常に無礼だったそうだ。
受診後、井上さんは怒り心頭。

「非常に貴重な症例を提供した
にも関わらず、あの態度は何だ!
こんなことなら病院を替える!」

担当医の上司に文書を提出した。

後日、あの医師は辞めさせる
方向で対応するとのこと。
正式な謝罪がいまだにないことに
井上さんの怒りは収まらない。


個人的な感想を述べると、
双方よくやった方だと思う。

一般的に患者さんは医師の態度に
対して直接クレームしない。
特に術後の患者さんは、長くなる付き合いを
見据え、(嫌がらせされたくない)という
思いがつきまとうからだ。


すぐに辞めさせるという病院の姿勢も珍しい。
せいぜい担当を替える程度だ。
井上さんはむしろ
「簡単に雇用契約を切れるのか?
日本の医療業界はどうなっているの?」

と若い医師を慮っていた。

井上さんは長くドイツで暮らしていた。
権利をしっかり主張できるのは
欧州仕込だろう。


大きい試験を2度クリアすれば、
医師免許は獲得できる。
今は知らないが、20年前に医療態度の
単位取得義務はなかった。

昔から、勉強しかしていない若者が
医師になってきたのだ。

人間が好きではないが勉強はできる。
現代社会では医師は安定職とされる。

だから希望者は絶えないし、
売り手市場だ。

医療もAIにとって代わられる領域は
増える一方だろう。
患者さんと真面目に対話できない医師は
稼げなくなる。


井上さんのような患者さんが増えなくとも
その流れは自明だ。
医療教育に対話態度は加わるべきだ。
指導も含め、簡単ではない…

アドリブセラピー

「ステージでは練習したことを
すべて忘れろ!」
チャーリー・パーカー

めずらしく平日に風邪を引いた。
合羽を着て小一時間走った。
一向に汗が出ない。
風呂に入ってもイマイチ汗が出ない。

ダルさだけが増し、そのまま早く寝た。

たっぷり寝たが、シャキっとしない。
喉も痛いし、寒気もする。
少し朦朧とするが、午前は往診だ。
今朝は15軒訪問する。

首を長くして待っているはず…

ありがたい。

患者さんがみな自分より軽症だ!

首から頭にかけてとても重い。
頭が働かない。アホになっている。
もはや「反射」で診療している。

ところが…

割といい感じだ。
診療が実にスムーズなのだ。

笑いも多い。

朦朧とするのも悪くないぞ!
自然体な気がする。
朦朧としていても目の前の
ことには集中できる。

診療中にゴチャゴチャ考えては
いけないのかもしれない。
考える仕事は既に済ませておく。

準備段階で。

診療も演奏と同じなのか!

これって悟り?

おめでたい医者だ。
診療の録画は存在しない。

それだけが救いだ。

体調管理はきちんとね、

興奮しないでください

北島さんは75歳女性。
夫も当院の患者さんだ。

「最近お父さんが鼻血が出るの」

と夫の現況を相談してきた。

「奥さんに興奮してんじゃない?」
「いくつだと思ってるのよ!」
と叱られた。

そして打(ぶ)たれた。

鼻血のようすを詳しく聴いた。

心配するほどの状況ではないと説明。

高血圧などで止まりにくいことは
あるが、基本的に圧迫で止まる。

10分間続けて圧迫するのが大事。

 

一人の料金で二人分の診療をする。

親切な主治医だ。

そして診療終了後、恒例の握手。

北島さんは
「手温かいでしょ?」
と訊いてきたので、
「興奮してんじゃない?」

もう一発打たれた。

親切な主治医だ。