
「持病のある高齢者だけでしょ、
心配しないといけないのは?」
岩坂さんは、話題の新型ウイルスに
触れ、そう言った。
米屋を経営している岩坂さんは
75歳の男性だ。
お正月は、他では絶対に食べられない
餅を用意して孫たちを迎える。
孫もそれを楽しみにしている。
糖尿病でインスリン治療の岩坂さん。
客観的には、しっかり
「持病持ちの高齢者」
なのだが…
ご本人の気持ちは現役バリバリだ。
下町の高齢者は自営業が多い。
生涯現役という人も少なくない。
だから気持ちが若い。
「ホントに病気の人多いわよねえ。
どこも悪くないのが申し訳ないわ」
という高橋さんは生活習慣病の宝庫だ。
では何しに診療所に来ているのか?
雑談だけが目的のつもりなのか?
自分を「病気」と思わない。
自分を「高齢者」と思わない。
「自分は死ぬまで健康だった」
と最期を迎える。
良いことなのだろう…