病を水に流せるか?

利き手でない左手の機能向上に
努めている。
左手をもっと繊細にしたい。
まあ主に楽器演奏が目的だが…

石川さんは79歳の男性。
趣味は渓流釣り、麻雀、水墨画
晩酌も毎日する。

若い頃は会社を経営していた。
イケイケだったそうだ。
徹夜麻雀を3日続けたこともある。
毎日ウイスキーはボトル1本。

本人いわく
「滅茶苦茶してましたよ」

そんな生活が影響したのか。
50代のときに脳卒中を発症した。
右半身の麻痺は今も強く残っている。

バリバリやっていた人ほど
自暴自棄になる。
しかし、石川さんは逆だった。
「まあしゃあない」
と開き直った。

クヨクヨする、という言葉は
石川さんの辞書にはない。

渓流釣りは奥さんが同行し、
餌つけ係を担当している。
最初は虫が苦手だった奥さん。
今は、ミミズもゴカイも楽勝だ。

「卒中やったお陰でむしろ、
前より色々やってません?」
「そうかもしれませんね」
ガハハと笑う石井さん。

済んだことは忘れる。
病も水に流す。
はい次、はい次。
川の流れのように…

へこたれない患者さんから
学ぶことは無限だ。

頭が割れるように痛い

「最近頭痛があるんです」

今村さん(60歳、女性)は訴えた。

もともと健康な女性だ。
身体所見は全く問題なし。

自覚としての頭痛があるだけ。

経験上、心配いらない頭痛だ。

「秋頃まで様子みましょう」

提案に対し、今村さんは訊いてきた。

「MRI検査しなくていいですか?」

悩ましい質問だ。
はっきり言って必要ない。

少なくとも今回の頭痛に関しては。

但し今回の頭痛と関係ない病気が
見つかる可能性はわからない。

脳腫瘍、動脈瘤、小さな梗塞…

「ヤブヘビ」というやつだ。

今回見つけるべきものではない。

これは検査全般に言えることだ。
検査は常に好ましいわけではない。

検査に治療効果はないのだから。

早期発見が目的なら毎年検査を
受ける必要がある。
それはそれで意味はあるだろうが、

別の話だ。

結局、様子を見ることになった。
なんだかんだ話しているうちに

今村さんの頭痛は消えていた。

まあそんなもんだ。

「ところで息子どう?」

以前、息子も頭痛で通院していた。

「会社辞めて頭痛治りました」

「よかったねえ」

今村さんは苦笑いしながら、

「ニートよ。それが頭痛の種かも…」

消えていた今村さんの頭痛が

復活した。

まあそんなもんだ。

とにかく検査は延期してよかった。
頭痛の種が増えなくてよかった。