「最近頭痛があるんです」
今村さん(60歳、女性)は訴えた。
もともと健康な女性だ。
身体所見は全く問題なし。
自覚としての頭痛があるだけ。
経験上、心配いらない頭痛だ。
「秋頃まで様子みましょう」
提案に対し、今村さんは訊いてきた。
「MRI検査しなくていいですか?」
悩ましい質問だ。
はっきり言って必要ない。
少なくとも今回の頭痛に関しては。
但し今回の頭痛と関係ない病気が
見つかる可能性はわからない。
脳腫瘍、動脈瘤、小さな梗塞…
「ヤブヘビ」というやつだ。
今回見つけるべきものではない。
これは検査全般に言えることだ。
検査は常に好ましいわけではない。
検査に治療効果はないのだから。
早期発見が目的なら毎年検査を
受ける必要がある。
それはそれで意味はあるだろうが、
別の話だ。
結局、様子を見ることになった。
なんだかんだ話しているうちに
今村さんの頭痛は消えていた。
まあそんなもんだ。
「ところで息子どう?」
以前、息子も頭痛で通院していた。
「会社辞めて頭痛治りました」
「よかったねえ」
今村さんは苦笑いしながら、
「ニートよ。それが頭痛の種かも…」
消えていた今村さんの頭痛が
復活した。
まあそんなもんだ。
とにかく検査は延期してよかった。
頭痛の種が増えなくてよかった。