禁煙?余裕、余裕


20歳男性が禁煙外来を受診した。

今ですか?

世間が新型肺炎恐怖で受診控え
しているこの「今」に禁煙?
しかも二十歳で!
17歳から一日30本吸っているとのこと。

「なんで止めたいの?」
「優先してしまうんです」


食べるとき、その前に一服、とやる。
友人との約束があっても、とりあえず
一服やってしまう・・・

別段止めるほどの動機ではないのでは?
健康のためでも、節約でもない。
あまりにも珍しい、「弱い」動機だ。

「マンホールに2歳の子がはまってても
先に煙草吸う?」
「いえ、吸わずに助けます」
「せやろ?止める必要ないんちゃうの?」
「でも止めるために来たんで・・・」

念の為に訊いたが、やはり合法の
「普通」の煙草のようだ。
とにかく決意は固そうなので、一通り
禁煙のコツと落とし穴を伝授した。

禁煙成功後に「好奇心」を出さないこと。
喫煙者は好奇心旺盛でないはずがない。

ホントに止められてるかどうか
試しに吸う

これをやってしまう。
これをすると皆同じセリフを吐く。
「おお、全然止められてる!」
しかし、このときステージが変わる。

「禁煙している人」から
「いつでも禁煙できる人」に・・・


いつでも禁煙できるから、また吸い始める。
こうして再び「喫煙者」になる。

非常に納得したように聞き入っていた。
当院の禁煙成功率は90%を超える。
だから彼も成功するだろう。

しかし、まだわからない。
なぜ「今」「この診療所」に?

やはり喫煙者は好奇心旺盛なのだろう。

禁煙供養

”喫煙はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
の原因です。年間~人亡くなります”

赤坂の喫煙所で見つけたポスターだ。

このポスターは絶対に身体に悪い。

タバコの有害性が上昇する。

佐藤さん(60歳女性)は、昨年

同居していた兄を亡くした。

タバコと酒をこよなく愛する兄。
両親を早くに亡くした佐藤さん。
お兄さんが親代わりだったそうだ。

最愛の兄の死で悲嘆にくれていた。
しばらく眠れない日が続いた。

睡眠導入剤を処方してあげた。

半年ぶりに来院した佐藤さん。
「眠剤頑張って止めてます」

と誇らしげに言った。

「飲めばいいじゃん」
「認知症になりたくないし」
「何で?」
「誰も面倒みてくれないもん!」
「誰にも面倒かけないのなら、
認知症でもいいんじゃないの?」

「そっかあ!」

眠剤を飲まなくても眠れる。
だから、眠剤はいらない。
ヘトヘトになって眠りに落ちる。

だから、眠剤はいらない。

それで行こう、そう告げた。

人に迷惑?面倒をかける?
そんなことは動機にはならない。

そんな人は最初から薬を飲まない。

禁煙も続いているそうだ。
本人いわく「奇跡」だ。
供養の気持ちで禁煙を継続している。

素晴らしい。

「兄さんの分まで酒とタバコ
やってあげたら?」

つい天邪鬼をしてしまう。

さすがに
「そっかあ!」

とはならない…

身内の死は「有限」を教えてくれる。
残りの人生において、酒とタバコが

無駄だと思うなら止めればいい。

病気にならないため?
そんな消極的な理由は動機にならない。

そんな人は最初から吸わない。

新たな一歩を踏み出す。

そのために古い習慣を捨てるのだ。

兄の分まで今生を楽しもう!
後悔なきよう。