安楽死ツアー

老老介護が社会問題化して久しい。
社会保障への期待年々薄くなる昨今、
益々深刻になっていくだろう。
明るくセクシーな解決法を
模索せねばならない。

「そろそろ死んであげなきゃ」
84歳の明石さんは言った。
友人の夫に向けての発言だ。
明石さんの友人は夫の介護に
疲れはてている。

明石さんは言った。
「安楽死ってできないの?うちの
お父さんは安楽死してもらったのよ。
全部外してもらったら翌日コロっと」


こうしてバレていくのだろう。
一層安楽死させにくくなる。

明石さんは続けた。
「あたしは安楽死させてほしいわ。
スイスなら安楽死できるんでしょ?」
「日本には自殺という手があります」
「自殺はみっともないでしょ。
やっぱりスイスで安楽死よ。
スイス行くおカネはあるのよ」

「安楽死目的でスイス行くなら
自殺と同じじゃないの?」

風邪患者との会話とは思えない。

「最期は任せてるんだからね!」
「ええ感じにしたげます」

いつもどおりに診療終了。

死に方、終い方、仕舞い方…

「人生会議」
吉本芸人が出た広告が話題になった。
厚労省発というところが胡散臭い。
社会保障費削減が大義になっている
可能性はないか?


現行の法律では医師がいなければ
人は死ぬことができない。
医師が明るくセクシーな解決法を
模索するしかない。

ワイルドで行こう、はしんどい

浦田さんは97歳女性。
ほぼ寝たきりで10年経過している。
人生通してほぼ薬を飲んでいない。
現在もたまに浣腸する程度。

頭脳は、とてもしっかりしている。
そっくりな娘さんの献身的な介護と
執着しない性格が良い。

定期往診で訪問した。
「ご機嫌いかがですか?」
「衰えました」
「衰えではなく、進化かもよ」
「進化ですか?」
「大昔なら、真っ先に猛獣に
食われたでしょ。
世の中が進化したから
寝たきりでも生きられる」
「先生、ものは考えようねえ」

似たもの母娘に感心されてしまった。
ほんのジョークのつもりなのに…

言葉を発してから考えてみた。
保護する対象が増えるということは
たしかに「文明の進化」だ。
他者を守れる余裕があるのだから。

自分が生き延びることだけに
必死にならなくていい。
それは絶対に幸せなことなのだ。

社会保障費を削減せよ!
それが当然とされる空気がある。

思考停止になっていないか?

何でも自己責任、自己負担という
野生時代の到来。
現代の野生は「食われておしまい」
ではないからややこしいんだけど。