早死のススメ

増岡さんは86歳男性。
以前もブログに登場している。
https://imcjapan.org/medicalcoaching/chat2?fbclid=IwAR29eE9SSjpLIbHL72Exz1rAQnbATbya1EDPepNt_AL_oncvfMg49DM-Vdc

昼前、往診時に起き出す。
起きてリビングに座るや否や、
ビールを冷蔵庫から取り出す。
主治医がグラスにビールを注ぐ。

なんて幸せな患者さんだ

たちまち上機嫌になる。
妻の機嫌もよくなる。
少量のアルコールはドーパミンが出る。
ドーパミンは言わば「覚醒剤」だ。

歳を取ると、ドーパミンが少なくなる。
アルコールを利用すればいい。
酒は使い方次第だ。

逆に、若くして不健康な人には
断固として禁酒させる。
労働しなければならないからだ。
若い人の飲酒はおカネも時間も
もったいない。

飲酒年齢を20歳から、75歳に
引き上げるべきだ!

若者はナチュラルハイを目指せ!
酒造メーカーと酒税をあてに
している政府から殺されるかな…

高齢未亡人にも酒を勧めることがある。
夫の前では飲んでいなかった
という女性は少なくない。

酒を始めたお陰で安定剤や眠剤を
止められたケースも多い。

どうせほどほどにしか飲まない。

「酒でも飲めば?」
と提案すると
「その手があったか!」
という顔をされることも多い。

寿命が縮むしかも知れない?

ちょうど良いではないか!
(またお叱りを受けるだろう…)
寿命は誰にもわからない。
逆に延びるかもしれない。
なんせ「百薬の長」だしね。

初舞台

夫は毒舌を吐いた。
「鳥越(祭り)までだね」
「あたし、お祭り見たら死ぬの?」
主治医は苦笑いするしかなかった。
「いつ死ぬかはだ~れもわかりません」

直美さん(68歳)は末期胃がんだ。
在宅で緩和ケアをしている。
幸い痛みはないが、眠れない。

最小限の点滴や眠剤でしのいでいる。

残された時間は少ない。
駆け込むように夫婦で旅行しまくった。
決して「おしどり夫婦」には見えない。
「会話弾むの?間(ま)持つんだ?」

何を話していいかわからない。
そんな熟年夫婦は少なくない。
幸い、会話はすこぶる弾むらしい。
夫婦できちんと向き合ってきたのだろう。
夫婦にしかわからない世界かもしれない。

夫の幸一さんのトークは確かにオモロイ。
新婚時代のエピソードだ。
「こんなのが出てきたんですけど」
夫の目の前に数枚の券を並べた直美さん。
吉原にある特殊浴場のサービス券だった。
(当時は「トルコ風呂」と言った…)
「これは期限切れね、これはあと何か月…」
目の前で淡々と仕分けする直美さん。
アッパレすぎる!
バツが悪い幸一さん。

町会の新年会の賞品として出品したそうだ!

ちなみに誰が当たったかも記憶している。
これまた当院の患者さんだった。

もちろん若かりし頃の話だ…

今年も鳥越祭りを見ることができた。
夫の予言を超えて生き延びている。
弱ってきているのは間違いない。
もう二人で旅行することはできない。
直美さんは元看護師だから気丈だ。
主治医は幸一さんを慮った。
「旦那さん、看てるの辛いんじゃない?」
「一蓮托生だから大丈夫」
直美さんがすっと返答した。

永遠の一蓮托生に「最期」はない。
尊い夫婦の舞台に出させてもらっている。
光栄だ!