ロックダウンのその前に


情報という言葉に「情」という
字が入っていることに気づいた。

元来「感情を報(しら)せる」
という意味だったのだろうか。

「早くロックダウンしろ!」
そういう論調が目に入るのは
こちらが意識し過ぎているせいか?

著名人の感染や、子供の感染には
やはり、みな動揺する。
感情むき出しの「ベタ」な情報が
飛び交うことになる。


少なくとも「一律休校措置」は
感染拡大を防がなかった。
ロックダウンは時間稼ぎにはなるが、
その間の副作用は「未知の世界」だ。

アメリカでは銃が飛ぶように売れている。
フランスではDVが多発していると
友人から聞いた。
人はウイルスだけで死ぬわけではない。
カネでも暴力でも思い込みでも死ぬ。

傍観者然して講釈垂れても仕方がない。
対案を出す。

現状の感染拡大の最大要因は院内感染だ。
逆に言えば、多くの医療従事者が
感染していることがわかっている。
しかも彼らは仕事をできていた。
陽性ではあるが軽症か無症状なわけだ。

では、一斉に施設に集めてはどうか?
他の軽症患者と一緒に。


場所は病院以外の施設を利用する。
地域のホテルを利用すればよい。
もちろん国がホテル代は保証する。
医療従事者と一緒にいるなら患者も安心だ。

基本的には安静にしているだけだから、
それほど消耗しない。

発覚している病院は氷山の一角だ。
他の病院でも必ず潜在感染者はいる。

そこで医療従事者に一斉に
抗体検査を実施する。

陽性者は安心して仕事ができる。
重症対応できるスキルのある人は
そのまま自信を持って勤務する。

スキルのない人は現行の医療を継続
しつつ、感染対応のヘルプをする。
外来のみ、もしくは軽症対応でもいい。

医者は30万人看護師130万人いる。
勤務から離れている人でも
仕分けくらいできるはずだ。


とにかく医療崩壊してしまったら、
ロックダウンもクソもない。

力をあわせるしかない。
治癒した人から順に免疫保有者だ。

この手は非常に有効だと思うのだが。

ロックダウンすると移動できなくなる。
幻のアイデアになりませんように・・・

初舞台

夫は毒舌を吐いた。
「鳥越(祭り)までだね」
「あたし、お祭り見たら死ぬの?」
主治医は苦笑いするしかなかった。
「いつ死ぬかはだ~れもわかりません」

直美さん(68歳)は末期胃がんだ。
在宅で緩和ケアをしている。
幸い痛みはないが、眠れない。

最小限の点滴や眠剤でしのいでいる。

残された時間は少ない。
駆け込むように夫婦で旅行しまくった。
決して「おしどり夫婦」には見えない。
「会話弾むの?間(ま)持つんだ?」

何を話していいかわからない。
そんな熟年夫婦は少なくない。
幸い、会話はすこぶる弾むらしい。
夫婦できちんと向き合ってきたのだろう。
夫婦にしかわからない世界かもしれない。

夫の幸一さんのトークは確かにオモロイ。
新婚時代のエピソードだ。
「こんなのが出てきたんですけど」
夫の目の前に数枚の券を並べた直美さん。
吉原にある特殊浴場のサービス券だった。
(当時は「トルコ風呂」と言った…)
「これは期限切れね、これはあと何か月…」
目の前で淡々と仕分けする直美さん。
アッパレすぎる!
バツが悪い幸一さん。

町会の新年会の賞品として出品したそうだ!

ちなみに誰が当たったかも記憶している。
これまた当院の患者さんだった。

もちろん若かりし頃の話だ…

今年も鳥越祭りを見ることができた。
夫の予言を超えて生き延びている。
弱ってきているのは間違いない。
もう二人で旅行することはできない。
直美さんは元看護師だから気丈だ。
主治医は幸一さんを慮った。
「旦那さん、看てるの辛いんじゃない?」
「一蓮托生だから大丈夫」
直美さんがすっと返答した。

永遠の一蓮托生に「最期」はない。
尊い夫婦の舞台に出させてもらっている。
光栄だ!