スナックのママ


右柳さん(80歳女性)はスナックのママ。
https://oneloveclinic.tokyo/blog/oneloveclinic/%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%9E%ef%bc%a0%E6%B5%85%E8%8D%89?fbclid=IwAR0uY1hKYyBr9Anfzws7FZHtei05ATAxL-NdLq106r06T8sfwbtUKStT35Y
2週間休んでいる。
人生初の休業期間だ。

「頭がおかしくなりそうよ」
たしかにいつもと様子が違う。
この歳での急激な変化はキツイ。

「店やればいいやん?」
「警察が3回も来たのよ」

近所に通報されたらしい・・・

通報されると警察も来るしかない。
「コロナで一人もいやしないわよ!」
ママと2名の警官のみの店内で
ママの怒鳴り声が響き渡った。
警官たちは恐縮して帰って行った。

「コロナ持ってくるな、って言えば?」
警官が無症候性感染者かもしれない。
そう助言したら
「勉強になったわ。次からそう言うわ」
と空虚な表情のママ・・・

新規感染者もグッと減り、終息しそうだ。
だが、なぜか心が晴れてこない。
それは院内感染や施設内感染の問題が
残っているからだけではない。
人間のイヤな心に触れる度に、
残像が頭から離れないからだ。


コロナピンチは美談より、醜談の方が
聞こえてきたのはこちらのせいか?
それもこれから検証が必要だ。

差別やら風評被害やら・・・


「コロナ診てるらしいね」

中華料理屋で、奥からママが
なかなか出てこない。
ようやく出てきて開口言われた。
家族全員当院の患者だが、
ママだけ最近来院しない。

(なかなかやるやんけ!)
笑えた。

まあ説明するのも邪魔くさいが、
言うことは言っておこう。
「コロナを選んでるわけではないよ。
熱出た人を診てるんよ。
ママが熱出たら診んでもええの?」


困った顔をしながら
「尾ひれ羽ひれつくから」
と気まずそうに言い訳していた。

これが風評被害か。
ようやく目の当たりにし始めた。

「あの診療所コロナ出たから
行かない方がいいって言われたよ」

外来で言われた。
常連患者だ。

「来んでええです。
お願いして来てもらう
仕事してないから」


サイレントクレーマーは
何も言わずに立ち去る。
うちの患者さんたちは
サイレントしていられない。
バイブレーションが隠せない。

28歳の力士が死んだ。
なかなか診てもらえなかったそうだ。
断った医師にとってもトラウマだ。

お上の指示に従ったのか?
風評被害を恐れたのか?
本当に新コロが恐かったのか?

それは知らない。
若者の死をムダにしてはいけない。

保険屋から聞いた実話だ。
一旦「コロナ陽性」と出たら、
保険には入れないらしい!
だから検査前に医者に加入を
勧めているそうだ!


こんなとこにもあった。
差別の種が!

そりゃあ検査も増えないはずだ。

組織の長としてスタッフを
守らないといけない。
コネを最大限に利用して職員全員に
PCR検査をした。

もちろん全員「陰性」だった。
うちの診療所はクリーンだ。

これからも定期的に検査する。

昨日はTBSの密着取材だった。
医療崩壊防止、医療従事者への
差別防止の提言をした。

使える手を全部使って
何とかしてやろうと思う。

陽性?陰性?


「陰性でした」
「よかったあ」

と安堵する患者さん。

合否判定のような心持で
結果を待っているのだろう。

インフルエンザ流行期に
よく出くわすシーンだ。

発熱疾患はゴマンとある。
インフルではない?では何?
こちら側は鑑別診断開始だ。

HIVの結果を伝えるときも
同じシーンがある。

検査のリピーターには
(何回繰り返すねん!)
と言いそうになるが、慎む。

インフルでもないHIVでもない
病の方が厄介だ。

治療法の確立していない病の方が
世の中には圧倒的に多い。

インフルもHIVも何とかなる。

「コロナ陰性でしたよ」
と患者さんに伝えるとき、
医者の安堵感の方が大きい。
「陽性」結果の後の様々な
手続きが大変だからだ。

新コロの終息と、医療側の躊躇。
検査数が増えないのは両方の
要因があるように思う。

インフルもHIVも新コロも全部
『RNAウイルス』に分類される。
ちなみにエボラもRNAウイルスだ。


それがどうした?

カテゴライズは診断法や治療法の
開発に役立つことが多い。
一過性流行に新薬を開発するのは
製薬会社にリスクが大きい。
既存薬が効けば効能追加でラッキー!

だから、アビガンやレムデシベル、
逆転写酵素阻害剤が候補に上がる。

まあ、患者にとっては
「感染しているかどうか?」
「死ぬのかどうか?」

重要なのはそれだけだ。

ウイルスは小さい、世界は広い
というお話。