恋せよ乙女

早い話が
何歳になっても女子は女子
ということだ。

往診している山根さんは94歳の女性。

デイサービスを利用している。

「デイはどないですか?楽しい?」

山根さんは不満な顔を浮かべた。

「お風呂の担当が男なのよ!」
恥ずかしいらしい…
女性の入浴介助を男性が担当?

確かにデリカシーに欠けている。

やむを得ない面もある。
入浴介助は力仕事だからだ。

どこもスタッフの人数は不足がちだ。

「一応伝えた方がいいよ。できれば

女の人にお願いしたいって」

キチンと直訴するべきだ。
考慮されるかもしれない。

納得できるかもしれない。
事情を知ることによって。

「ぼくもイヤ。男に入浴介助されるの」

山根さんは大笑いしていた。

年を取っても女子は女子。
ナメてはいけない。
そして、人生の先輩なのだ。
敬意を欠いた態度は絶対にアカン。 

利用者が本音を言うとは限らない。
みな、自分の立場が弱いと思っている。
イジワルされたくない。
医療従事者は心得ておくべきだ。

若さの秘薬

「それは更年期症候群です」
主治医は告知した。
尾関さん(79歳女性)に…

尾関さんは最近不調だ。
何となく頭が重いし元気が出ない。
実は同じ症状の人がたくさんいる。
低気圧が主因だ。
オホーツク海高気圧と太平洋高気圧。

うまく釣り合っている。

女性の方が比較的敏感だ。
頭痛、めまい、肩こり…
更年期症候群も似たような症状だ。

自律神経による不定愁訴の嵐だ。

「私忙しかったから更年期なかったのよ」
「でしょ。それが答えです」
要はヒマなのだ。
ヒマだと「不調」を探してしまう。
「忙しい」とは矢印が他人に向かう。

ヒマだと矢印は自分に向かう。

7月中旬にもなってこんなに寒い。
雨もしっかり降っている。
不作で野菜の値段は上がっている。
人間も野菜の一種だ。

調子が悪いと医療費その他で高くつく。

不調の尾関さんはポツリと言った。
「来月孫と旅行に行くことになったの」
「どこへ?」
「トルコ」
「すごい!孫は何歳?」
「大学生の孫二人と行くのよ」
「イイ関係!普通ありえないよ」

「おばあちゃん、おカネ出して、だって」

最近の孫はしっかりしている。
おカネは尾関さんがもつ。
荷物は孫がもつ、らしい。

「調子悪いのに大丈夫かしら?」
なるほど!

旅行に照準を合わしてるのだ!

「大丈夫に決まっている!」
本日2度目の告知をしてあげた。
孫と旅行、それ以上のクスリがあるか?
きっと若返って帰って来ることだろう。
楽しみだ。

ONE FOR ALL ALL FOR ONE

早い話が
家族の健康は総合点が一定しているのでは
ということだ。

家族が重い病を患う。
家族間での関係性に変化が起こる。
ドミノ倒し的にメンバーが病気になる
ということは滅多にない。

一緒に学ぶことで養生するようになる。
「自分が倒れてはいけない」
気持ちが免疫力を高めているのか?
実際、目の色が変わる家族は多い。
そして、以前より明らかに元気になる。

そういうケースは多い。

子どもが先に逝ってしまう。
その悲しみは言葉にできない。
しかし、数年後不思議なほど元気になる。
子どもの分まで生きてやろう!

人生を大切に生きている人は少なくない。

家族の健康は総合点が一定する。
勝手にそんな気がしている。

勿論当てはまらないケースもあるだろう。

人間は「関係」の中で生きている。
相手の状態に応じて自然と立ち回る。

親密な家族ほどバランスしている。

荒尾さん(78歳女性)は肥満している。
現在体重が78kgだ。
結婚当初、体重は45kgだったそうだ。
「詐欺ですね」
主治医は本音をつい吐いてしまう。
結婚当初、夫の体重が78kgだった。
夫はここ数年患っている。
現在体重は45kgしかないそうだ。
夫婦の体重が入れ替わったのだ!
総合点一定してるやんか…