
『荷風と私の銀座百年』
「主人は荷風のように生きたかったのよ」
妻がポツリ。
「荷風のように?」
増岡さんは口を開いた。
「生涯独身でさ」
「無頼の人ですね」
「オレなんて後悔ばっかりだよ」
と妻の前で憎まれ口をたたく。
「エエとこの子でしょ?」
「そう。官僚の息子だよ」
当時の著名人は家柄が良い。
漱石も三島もスゴイ一族だ。
今の日本も変わらないか…
血統や出のアドバンテージは大きい。
そんな話で盛り上がった。
すると妻が
「この人は自転車屋の息子よ」
「大出世じゃないですか!」
官僚なんてしょせん中間管理職。
モノを作り、直す方がエライ!
いや、いい表現ではなかったな。
全国の官僚、自転車屋のみなさん。
いつもありがとう。