ちょい不良(ワル)ばあちゃん

白川さんは91歳の独居女性。
うちには高血圧でかかっている。

株式投資で稼ぎ、孫に小遣いをやる。

米中貿易摩擦に頭を悩ませている。

先日、自転車ですれ違った。
自宅から30分は離れた場所だ。

最低1時間は走っていることになる!

路上でつかまると話が長い。
亡夫は遊び人だったらしい。
「先生、浮気しちゃあダメよ!」

会話の最後はこれで締める。

今回の検診も百点満点だった。
「素晴らしいじゃない!」
「サプリがいいのよ」
「サプリ…?」
「そう。サプリ飲んでるのよ」
「何のサプリ?」
「知らないわよ。効くヤツよ!」
ちょっとムカッと来たので言った。
「診療所とか主治医とか。ないの?」
「え?ああ診療所?」
「サプリもいいんやろうけども
せめてサプリ9、診療所1とか!」
「そうそう。みんなに言ってやるよ!
私の先生イイのよ~って!」
不敵な笑みを浮かべて言っのだ。

こちらの手を両手で握りながら…

主治医を手玉に取る91歳。
カラオケが趣味でビールで晩酌。
独居高齢者の鏡だ。

話そう尊厳死

「長生きしたくない」

検診にきた津山さんは84歳。
人間とは矛盾に満ちた存在だ。
「でも明日死んだら困るでしょ?」
意地悪な質問をしてあげる。
津山さんは苦笑いを浮かべる。
「検診受けてるくらいやもんね」
意地悪な主治医は膝をぶたれる。

人の生死は不確定要素だ。
「いつかの死」だけが確定している。
10年先の終着点は遠すぎる。

くっきり見える到着点は怖すぎる。

人生の最終形はこれでいいのか?
後悔ないようジタバタした方がいい。
世の中受け身だとロクでもない。
暗いニュースばかりだ。
まだ見ぬ景色を探しにかかる。

すると思わぬ感動があるかもしれない。

「みなに迷惑をかけたくない」
長生きしたくない根拠の常套句。

津山さんは「お約束」を発した。

日本人は実に「みんな」が好きだ。
「誰に聞いたの?」
「みんなそう言っていた」
「みんな」は日本一有名な存在だ。

欧米では非常に希薄な感情だ。
尊厳死の根拠に「迷惑」がない。
個人主義だからこその尊厳死なのだ。
「みんな」のために死にかねない日本人。
危なっかしい。
尊厳死の議論がなかなか進んでいかない。

やり残したことないようにしましょう。
健康面は医者に任せてOK!
一応納得して津山さんは帰宅した。