新型コロナウイルスその3


野口さんは75歳女性。
やや高い血糖値のフォローで
数ヶ月に一度受診する。
よく運動もし、順調だ。

「5月にダイヤモンド・プリンセスに乗る
予定だったんですよ。キャンセルしました。
危ないところだったわ」
「5月には落ち着いてるでしょ。
クルーザー会社助けてあげんと」


会社が無くなる可能性は高いが…

熟年夫婦旅行がほとんどだろう。
(今乗ってたら…)
ゾッとする気持はわかる。
不安をなだめるため、丁寧に
診察してあげた。

中田さんも75歳女性。
ホテルでメイドをしている。

「今朝突然仕事に来ないでって」

新型コロナの影響でキャンセル続出。
それにしても、当日になって
「来なくていい」はひどい。
立場が弱いので従うしかない。

「おかげで早く来れたから安心よ」
中田さんは前向きだ。
ご褒美として、いつもより念入りに
診察してあげた。

感染症流行も自然災害の一種だ。
オーストラリアの火災も数十年ぶりの
豪雨でようやく鎮火した。
大きな力には、人間は到底敵わない。

1mmの百万分の一サイズのウイルスが
間接的に人生に噛みつく。

アホにならずに、冷徹にそして明るく
「怪我の功名」を期待するしかない。

鼻水最強説


娘の幼稚園が学級閉鎖になった。
一級上、「年中さん」の組で。
インフルエンザの園児が多いそうだ。

近隣の小中学校の学級閉鎖情報は
ちらほら診療所にも入ってくる。
子どもたちの密集する場所では、
それなりに流行っているようだ。


全国的に、例年流行がピークになる時期
にも関わらず、インフルエンザが静かだ。
「新型コロナウイルス」対策が
インフルエンザ対策にもなっている。

「怪我の功名」(?)ともいえる。

そうこうしているうちに、花粉症の
季節も到来しつつある。
明らかに「花粉症の鼻水」を垂らす
患者さんが出始めている。

患者さんに言った。

「よかったじゃない!」
「何がですか?」
「コロナの予防にもなるでしょ」
「えっ?」


鼻水と咳で花粉を除去しようとする。
コロナウイルスも入る余地がない。
アレルギーとは敵視すべきでない
相手を敵とみなす疾患だ。
ホンマモンの敵にも効くはずだ

そう説明した上で、
「怪我の功名になるかもよ。
薬飲まない方がいいんじゃない?」

患者さんは悩んだ末、
「やっぱり薬下さい」
となる。

まあ、懸命な選択だろう。
エビデンスがないのだから。

『無治療花粉症は肺炎予防に働くか?』

だれも研究材料にしないだろうな…

とは言え、温故知新は侮れない。
昔の子どもたちが鼻を垂らしたままに
していたのは意外と理に適っているかも…

病人の定義

「持病のある高齢者だけでしょ、
心配しないといけないのは?」

岩坂さんは、話題の新型ウイルスに
触れ、そう言った。

米屋を経営している岩坂さんは
75歳の男性だ。

お正月は、他では絶対に食べられない
餅を用意して孫たちを迎える。
孫もそれを楽しみにしている。

糖尿病でインスリン治療の岩坂さん。
客観的には、しっかり
「持病持ちの高齢者」
なのだが…
ご本人の気持ちは現役バリバリだ。

下町の高齢者は自営業が多い。
生涯現役という人も少なくない。
だから気持ちが若い。

「ホントに病気の人多いわよねえ。
どこも悪くないのが申し訳ないわ」

という高橋さんは生活習慣病の宝庫だ。
では何しに診療所に来ているのか?
雑談だけが目的のつもりなのか?

自分を「病気」と思わない。
自分を「高齢者」と思わない。
「自分は死ぬまで健康だった」
と最期を迎える。


良いことなのだろう…