浦田さんは97歳女性。
ほぼ寝たきりで10年経過している。
人生通してほぼ薬を飲んでいない。
現在もたまに浣腸する程度。
頭脳は、とてもしっかりしている。
そっくりな娘さんの献身的な介護と
執着しない性格が良い。
定期往診で訪問した。
「ご機嫌いかがですか?」
「衰えました」
「衰えではなく、進化かもよ」
「進化ですか?」
「大昔なら、真っ先に猛獣に
食われたでしょ。
世の中が進化したから
寝たきりでも生きられる」
「先生、ものは考えようねえ」
似たもの母娘に感心されてしまった。
ほんのジョークのつもりなのに…
言葉を発してから考えてみた。
保護する対象が増えるということは
たしかに「文明の進化」だ。
他者を守れる余裕があるのだから。
自分が生き延びることだけに
必死にならなくていい。
それは絶対に幸せなことなのだ。
社会保障費を削減せよ!
それが当然とされる空気がある。
思考停止になっていないか?
何でも自己責任、自己負担という
野生時代の到来。
現代の野生は「食われておしまい」
ではないからややこしいんだけど。