他言無用

「絶対にゆうたらアカンで」
コソコソ話…秘密…
秘密を打ち明けると絆が深まる。 

確かに親友になれるかどうかの
試金石だった気がする。

医療現場は守秘義務が原則だ。
「秘め事」を打ち明ける。
医師と患者との関係構築に
重要な要素なのかもしれない。

であれば、TVやネットで情報が
散乱するのは関係構築にとっては
好ましくないかもしれない。

とはいえ、セカンドオピニオンも
重要だ。
相談する窓口が多いことが
奏功することもある。

良好な関係を構築するには?

やっぱり雑談しかない。
雑談の中で直接的に病と無関係な
「秘め事」を共有する。

かなり効果はある。
勝手に治ってくれるほどの…

簡単にできるかどうかは知らない。
普段から「不断の雑談」を
繰り返すしかない。


診療における秘伝中の秘術である。
そっと公開してみた。

自撮りで病を撃退!?

夫婦でトンカツ屋を営む白田さん。
72歳の男性だ。

白田さんはコレステロールと

ボーリングの調子がよくない。

白田さんはボーリングが趣味で、

夫婦で練習に勤しんでいる。

「トンカツつまみ食いしてるの?」
「キャベツしか食べてませんよ」
「おかしいなあ、薬飲んでる?」
「それを少しサボってます」
「ちゃんと飲んでね」

「はい(うなづく)」

会話を続けた。

「動画撮ってる?」
「え?」
「玉投げるとこ」

「使い方わからないもん」

フォームを客観視した方がいい。
今は携帯で動画が撮れるいい時代。
そんな助言をした。
でも、白田さんは自称「機械オンチ」。

何だかんだやらない言い訳を探す。

素直じゃないからコレステロールが

下がらんねん!

1時間後、妻も定期受診に来た。

妻もコレステロール治療中だ。

「奥さんは絶好調やね」
「よかった!」
「ボーリングのスコアも?」
「そうなんですよ!」

満面の笑みでうなづいた。

旦那と交代交代で動画を撮るよう

助言した。

妻は
「自分の姿は見えないですもんね!」

と言った。

素直だ!

二人は助言し合っているはずだ。
素直に聴く妻は上達する。
素直に聴かない夫は伸び悩む。

ならば自分で自分を見るしかない。

患者の特性とニーズに合わせる
「オーダーメイド医療」だ。

やってもうたあ

「もういつ死んでもいい」
相変わらず外来でよく耳にする。

なら何で医者に来ているの?
その矛盾は解決されないまま。
人間とは理不尽な存在だ。

庄田さん(76歳女性)もその一人。
高血圧と軽い不眠症。

「色々やった方が良いですよ。
悔いを残さないように」
「もう十分やりました」
取り付く島がない…

そんなことないでしょ。
読んでない本もあるでしょ?
行ってないところは?
会いたい人もいるのでは?

いちいち首を振る。

イライラしてきて言った。

「教えたら?それだけ経験が
あるのなら、教えましょうよ。
先人の仕事ですよ!」

庄田さんはこっちを見つめた。
意味ありげな眼差しだ。

「庄田さん何の仕事してたの?」
「まあいいじゃないですか」
「気になるなあ。夜のお仕事?」
最もなさそうな想像を伝えた。

「違う。教師をしてたの」
「えっ?どこの誰を?」
「高校男子の国語の教師」

人は見かけによらない。
およそ50年前から定年前まで
男子高生を教えていたのだ。
しかも、国語を。
(にしては会話が噛み合わないが…)

時代も今とは異なる。
女だてら、多感な男子高生を教える
のは大変だっただろう。
実際、女性教師はまれだったそうだ。

男子校出身だからよくわかる。
自分らの担任たちとまさに同世代だ。
担任が国語の先生だったいう話で
盛り上がった。

庄司さんへの見る目が変わったのは
言うまでもない。

患者さんはほとんどが人生の先輩。
当然、意外な経歴の持ち主もいる。

釈迦に説法。
よくやってしまう。
気をつけよう。