生きてるだけで丸儲け

「今年もよろしくお願いします。
でも、おめでとうは言えないのよ」

木田さんは86歳女性。
昨年末に妹を亡くした。

生き延びると「別れ」は必然的に増える。
死後の世界を信じていない主治医は
「再会の日は遠くない。妹さんの分まで
楽しく生きてあげましょう」

とだけ伝えた。

高齢者がよく言うセリフに
「迷惑ばっかりかけてて
生きてて良いのかしら?」

というのがある。
木田さんも言っていた。

そんなことはない。
医療費も払っている。
眼鏡も洋服も購入したものだ。
消費活動は誰かの役に立っている。

生まれたときは3kgの裸体だった。
15倍くらいに成長し、衣食住どころか
眼鏡まで獲得した。
生存競争の「勝ち組」だ。


木田さんは言った。
「誰かが言ってた。生きてるだけで
丸儲けだって」
「ほんま、そのとおりですよ」


大抵の動物は生殖活動が終われば、
寿命が尽きる。
生殖活動が終わっても、文化的活動を
できることが人間の真骨頂だ。

「後輩に生き延び方を教えないと
あきませんよ」


親の年齢を超えて生き延びる。
年下の兄弟姉妹を亡くす。
その孤独感は未知の世界だ。
だけど生きるしかない。
木田さんは浅草が大好きだ。
そして食べるのが大好きだ。

好奇心さえあれば生き延びられる。

痛みという孤独

坂井さん(82歳)の耳が良くなった!

腰の痛みがかなり良くなった。
すると耳まで聞こえるようになった!

もちろん数値評価としての聴力は
上がるはずがない(と思われる)。

これまで「痛すぎた」のだ。
全神経がそこに集中するだから
相対的に「聴くこと」への意識が
おろそかになるのは当然だ。

これは健康状態であっても同じ。
意識していない音は、
音として認識されない。
逆に、自分の名前は遠くで
呼ばれても聞こえる。

純粋に聴力だけを使って
聴いているのではないのだ。
他の色々な能力も一緒に動員して
聴いているのだ。

すっかり顔色も良くなった坂井さんに
「もう死ぬんかと思いましたよ」
と言ったら、
「まだ早いでしょ!?」
と笑いながら返された。

イイ徴候だ!

痛みは孤独感である

以前、どこかで読んだ言葉だ。
聞こえなくなるほどだから、
どれほど孤独か…