アドリブセラピー

「ステージでは練習したことを
すべて忘れろ!」
チャーリー・パーカー

めずらしく平日に風邪を引いた。
合羽を着て小一時間走った。
一向に汗が出ない。
風呂に入ってもイマイチ汗が出ない。

ダルさだけが増し、そのまま早く寝た。

たっぷり寝たが、シャキっとしない。
喉も痛いし、寒気もする。
少し朦朧とするが、午前は往診だ。
今朝は15軒訪問する。

首を長くして待っているはず…

ありがたい。

患者さんがみな自分より軽症だ!

首から頭にかけてとても重い。
頭が働かない。アホになっている。
もはや「反射」で診療している。

ところが…

割といい感じだ。
診療が実にスムーズなのだ。

笑いも多い。

朦朧とするのも悪くないぞ!
自然体な気がする。
朦朧としていても目の前の
ことには集中できる。

診療中にゴチャゴチャ考えては
いけないのかもしれない。
考える仕事は既に済ませておく。

準備段階で。

診療も演奏と同じなのか!

これって悟り?

おめでたい医者だ。
診療の録画は存在しない。

それだけが救いだ。

体調管理はきちんとね、

超常現象

「オシッコが出て仕方ないんですよ」
排尿回数が多すぎると娘に指摘され、
大杉さん(82歳、男性) は来院した。

膀胱炎の可能性もある。

「尿を調べましょう」

2時間経過。
待てど暮らせどオシッコが出ない。

「どうしても出ないんです」
「ホンマに頻尿?貧乳の間違いでは?」

「(ボケは無視され)治ったかな?」

勝手に治ってよかった。
「また困ったら来て」
大杉さんは首をかしげながら、
帰宅。

北川さん(71歳、女性)は動悸が主訴。
「昨日はドキドキして眠れなかった」
「不倫してんの?」

「もう若くないわよ!」

北川さんの夫はうちの患者だ。
夫から
「診療所行って来い!」
と促されて来院した北川さん。

「今どう?」

「憑き物がとれたように治ったわ」

ニコニコで帰ってくれた。
夫の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

「頭が痛くて仕方がない」
小沢さん(26歳女性)はバーベキュー後、
嘔吐した。

吐き気が改善したら今度は頭痛だ。

「どんな風に痛い?ズキンズキン?
それとも、ギューッって感じ?」
「ギューッと締め付けられる感じ」
「バーベキューは何の肉?」
「えっ?」
「牛?豚?鶏?魚?」
「ああ、牛」

「そっちもギューなんやね」

てな話を2~3分したところで
「ところで今痛みどない?」
「あれ?治ってる…」

こんな日もある。
何もしなくても治ってくれる人が
連発する日。

人体とはそんなものなのだろう。
患者さんは治りに来てるのだから。

決して、オカルトや超能力ではない。
何となく音楽的調和がはまる日。

人体もリズム楽器なのだ。

百発百中になる日が来るといいな。

後日談

みな、再発してないそうだ。
よかった。

暑さを蹴散らすありがとう

感謝しているのにそれを伝えないのは、
プレゼントを包んだのにそれを渡さない
ことと同じである

ウイリアム・アーサー・ウォード
(イギリスの哲学者)

「何にもお返しがないのよ」
「お礼ひとつ言わないからね」
高齢患者さんからたまに聴く言葉だ。

下町のちょっと怖い部分だ。

感謝はできるだけ早く。

そう心がけている。

咄嗟に出る「ありがとう」を美しく。
時間をかけるほど「解釈」が入る。
美しさは消えていく。
ありがとうも「即興演奏」だ。

相手にきちんと届く「ありがとう」。
自分の「ありがとう」がええ加減だと
他人の「ありがとう」にも鈍感になる。
世に空虚な「ありがとう」が蔓延する。

『ありがとうにバリエーションを』
最近耳にした言葉だ。
結構気に入っている。

今、目の前の人に伝えた「ありがとう」。
どんな色やったかな?