恋せよ乙女

早い話が
何歳になっても女子は女子
ということだ。

往診している山根さんは94歳の女性。

デイサービスを利用している。

「デイはどないですか?楽しい?」

山根さんは不満な顔を浮かべた。

「お風呂の担当が男なのよ!」
恥ずかしいらしい…
女性の入浴介助を男性が担当?

確かにデリカシーに欠けている。

やむを得ない面もある。
入浴介助は力仕事だからだ。

どこもスタッフの人数は不足がちだ。

「一応伝えた方がいいよ。できれば

女の人にお願いしたいって」

キチンと直訴するべきだ。
考慮されるかもしれない。

納得できるかもしれない。
事情を知ることによって。

「ぼくもイヤ。男に入浴介助されるの」

山根さんは大笑いしていた。

年を取っても女子は女子。
ナメてはいけない。
そして、人生の先輩なのだ。
敬意を欠いた態度は絶対にアカン。 

利用者が本音を言うとは限らない。
みな、自分の立場が弱いと思っている。
イジワルされたくない。
医療従事者は心得ておくべきだ。

病み上がりの誕生日

早い話が
医療従事者は俳優でなければいけない
ということだ。

本日1歳の誕生日を迎える息子。
39度台の熱が続いていた。
身体中から濁音、笛のような音。
発し続けている。
「肺炎」もしくは極めて近い状態だ。
いつもの笑顔はなし。間欠的に号泣。

大食漢が全然食べない。

上の子は4歳になる。
これまで一度も飲んでいない。
信頼できる医師の報告も背中を押す。

苦悶の我が子。

冷静でいられる親はいない。
妻の表情も当然曇る。
「大丈夫。みんな通る道やから」
落ち着くよう、うながす。
息子にとってラッキーなのは…
まだ「不安・心配」という概念がない!

正味「病の苦しさ」だけだ。

 

病によってもたらされる不安や心配。
(いつまで続くのだろうか?)
(大きな病気が隠れているのでは?)

つまり幻想が苦しみを助長する。

 

「不安」という感情を子供に教えるのは?
ほどんどの場合「親」だ!
気持ちはわかる。
だが、事故らないために冷静さが必要だ。
自分の母親や先輩に訊く。
信頼できる医療機関に直接電話する。
リアルな症状をプロに伝えた方がいい。

素人がネットを見ると、症状が増える!

 

とにかく息子は根性で治した。

逞しく育つだろう。

妻は医師の夫を見直しているようだ。
でもね…
小児科医ではないのだ。
平静を装うのは大変だ。
演技派の俳優でよかった。
治ってくれるまで安堵できない。
それは患者さんでも息子でも同じだ。
今晩はケーキを食べさせてやろう。
頑張ったご褒美に…

エクソシスト医者

今度お家へ行って除霊したげます

今日は2名来院した。
小黒さん90歳と清武さん83歳。
どちらも女性だ。
2人とも
「こんなこと言うと笑われるかしら」

から始まった。

まあ、色々と見えるそうだ。
昔出会った人たち…

よくわからない蠢く(うごめく)もの…

高齢未亡人が多い。
夫を亡くした直後にはあまり聞かない。
数年経ってから見え出す。
認知症初期ということもある。
レビー小体型認知症は幻覚が特徴だ。

だから認知機能の検査は欠かせない。

今回は二人とも認知症ではなかった。

幸か不幸か…

本当に存在するのかどうか?
それは、この際どちらでもよい。
幽霊もお化けも「娯楽」でしょ?
という姿勢だ。
ディズニーランドはいつも満員だ。
ディズニーキャラは想像の産物だ。
想像と幻覚の違い?
リアリティの違いだろう。
ディズニーランドにはキャラが実在する。
十分にリアリティがあるではないか!
見方次第ではただのお化け屋敷だ。

と言ってお叱りを受けたが…

人間の脳は色々見せてくれる。
幻覚や幻聴を作るのは得意技だ。
脳内物質の過剰分泌かも知れない。
自然現象を説明する。
科学がその役目を果たしてきた。
今「不思議」と思われていること。
それも近未来解明されるはず。
科学者としてその態度は崩せない。
とは言え、科学者も週末教会に行く。
医師もお参りする。

文化は文化。それでいいのだ。

無下に否定するのも大人げない。
「除霊得意なんですよ、こう見えて。

今度除霊しに行きますよ」

医療従事者よ、エクソシストたれ!
ほどほどにね…