便器の話


佐藤さん(72歳)は毎月受診する。
特に大きな病気はない。
弱い眠剤と便秘薬を取りにくる。

佐藤さんは某有名私立高校出身で
インテリジェンスが高い。
「うんちく」の量に驚く。

トルクメニスタンやウズベキスタンの
文化にも詳しい。
多くの日本人には「どこやねん?」
であろう国に詳しい。


検診で便の検査をするときの話。

「うちの便器はドイツ式なので」
とこうくる。

洋式便器はドイツ式とフランス式で
違うそうだ。

便を停留させる場所があるのが
どちらかだそうだ(忘れた)。
日本の便器の多くはどちらかだ
そうだ(忘れた)。

今回の主訴は腹部症状だ。
下剤の量をどうすればいいか?
「普段は便秘だが、薬を飲みすぎると
下痢してしまうんですよね」


当たり前だ。
賢い人のはずなのだが…

「男の子の方がお腹が弱い傾向が
あると言いますが…」
と言いそうになって止めた。
新たな「うんちく」には時間がない。

なんとなくシモの話が多くなった。
下剤の量をどうするか?
佐藤さんに結論を下した。

「やっぱり多く出しときますよ。
大は小を兼ねるといいますから」

便秘も7倍?

「女は7の倍数に気をつけろって本当ね」
「?(主治医)」
「テレビで言ってた」
「うちテレビないんよ」
「男は8の倍数、女は7の倍数って」
「知らん」
「70歳で弱ったのよ。7の倍数だもの」

それを「暗示」という。

田島さん(70歳)はテレビ好きだ。
持病は骨粗鬆症と血圧が少し高いくらい。

不調の原因?
それは複雑に絡み合っている。
天候もあるし、商売の問題もある。
人間関係も大いに影響する。
7年か8年周期で健康状態を見直す。
それは決して悪いことではない。
しかし不調の原因の追認は無意味だ。
「不調なのは年齢が7の倍数だから」
では、あきらめにつながるだけ。

田島さんは使用法を間違っている。

「最近便秘がひどくて」
「なんで?」
「運動してないからかな?」
「なんで?」
「テレビばっかり観てるからかな?」
「運動もせずにテレビばっかり観てる人は

ウンコせんでエエです!」

なぜか島田さんは喜んでいる。
叱られているのに…
その顔が可愛かったので、ちょこっとだけ
下剤を出してあげることにした。