逃げるから怖くなる

季節の変わり目に頭がモヤモヤする。
岡田さんは84歳の女性。
めまいの一種と捉えている。

表情の硬さはさながら鉄仮面だ。
「笑った方がいいですよ」
対処法を提案した。

かなり前に仕入れた知見だ。

笑うから面白くなる。
面白いから笑うのではない。

逃げるから怖くなる、というのもある。
心理学用語で「アウトサイド・イン」
というそうだ。

もしかしたら表情を和らげると
モヤモヤがとれるかもしれない。
少なくとも緊張は取れるだろう。
有害な副作用は考えられない。
というわけで、笑顔を励行した。

「面白いことを想像するように」
岡田さんは困惑していた。
まあそう面白いこともないそうだ。
だからネタをプレゼントした。

最近、家族が明るく過ごせるように、
朝の挨拶するときスキップで登場する。
家庭で、陽気な父親をやっている。

という告白をした。
このネタは、岡田さんと義娘、
師長にも大いにウケた。

気を良くした主治医は調子に乗り、
スキップで部屋をあとにした。

しばらく岡田さんは、この絵で
思い出し笑いできるだろう。
サービス業を実践している。

若さの秘薬

「それは更年期症候群です」
主治医は告知した。
尾関さん(79歳女性)に…

尾関さんは最近不調だ。
何となく頭が重いし元気が出ない。
実は同じ症状の人がたくさんいる。
低気圧が主因だ。
オホーツク海高気圧と太平洋高気圧。

うまく釣り合っている。

女性の方が比較的敏感だ。
頭痛、めまい、肩こり…
更年期症候群も似たような症状だ。

自律神経による不定愁訴の嵐だ。

「私忙しかったから更年期なかったのよ」
「でしょ。それが答えです」
要はヒマなのだ。
ヒマだと「不調」を探してしまう。
「忙しい」とは矢印が他人に向かう。

ヒマだと矢印は自分に向かう。

7月中旬にもなってこんなに寒い。
雨もしっかり降っている。
不作で野菜の値段は上がっている。
人間も野菜の一種だ。

調子が悪いと医療費その他で高くつく。

不調の尾関さんはポツリと言った。
「来月孫と旅行に行くことになったの」
「どこへ?」
「トルコ」
「すごい!孫は何歳?」
「大学生の孫二人と行くのよ」
「イイ関係!普通ありえないよ」

「おばあちゃん、おカネ出して、だって」

最近の孫はしっかりしている。
おカネは尾関さんがもつ。
荷物は孫がもつ、らしい。

「調子悪いのに大丈夫かしら?」
なるほど!

旅行に照準を合わしてるのだ!

「大丈夫に決まっている!」
本日2度目の告知をしてあげた。
孫と旅行、それ以上のクスリがあるか?
きっと若返って帰って来ることだろう。
楽しみだ。