人気出てきた?


朝から赤ん坊を抱いた人たちが
診療所の前で並んでいる。

内科しか標榜していないうちでは
珍しい光景だ。

「なんで?」
ナースに訊いた。
「小児科が発熱を診ないそうです。
あそこなら診てくれるからって」

ズッコケた。

9時半から在宅を廻らないといけない。
11ヶ月児一人だけ診察して勘弁願った。

午後の外来で来た39歳介護職の男性。
38度近い発熱状態で入ってきた。

「熱あるんなら連絡してよ。
貼り紙もあるやろ!
君も高齢者相手の仕事やろ!」

久々に患者さんを叱った。
幸いコロナではなさそうだが。

聴くと、近隣の診療所に断られ。
うちに行くように指示されたと。
誘導した診療所も連絡してこいよ!

夫が医師をしているナースの話だ。
夫がパート先から日給を減らして
ほしいとお願いされたそうだ。
患者激減で経営がままならない。
医師も売り手市場ではなくなっている。

オンライン診療が流行ってきている。
こうなると「軍人将棋」が始まる。
有数の名門大学出身の医師だけの
世界になっていくだろう。
オンラインで食える医師は限定される。

医者は人気商売だ。
いや、すべての経済の指標は「人気」だ。
自分が人気があると言いたいのではない。
人の「気を惹く」努力をしているのだ。
他で嫌がられた患者の気を惹いている。

コロナで患者が減ったとか愚痴る前に
やるべきことは山ほどあるはず。

恋せよ乙女

早い話が
何歳になっても女子は女子
ということだ。

往診している山根さんは94歳の女性。

デイサービスを利用している。

「デイはどないですか?楽しい?」

山根さんは不満な顔を浮かべた。

「お風呂の担当が男なのよ!」
恥ずかしいらしい…
女性の入浴介助を男性が担当?

確かにデリカシーに欠けている。

やむを得ない面もある。
入浴介助は力仕事だからだ。

どこもスタッフの人数は不足がちだ。

「一応伝えた方がいいよ。できれば

女の人にお願いしたいって」

キチンと直訴するべきだ。
考慮されるかもしれない。

納得できるかもしれない。
事情を知ることによって。

「ぼくもイヤ。男に入浴介助されるの」

山根さんは大笑いしていた。

年を取っても女子は女子。
ナメてはいけない。
そして、人生の先輩なのだ。
敬意を欠いた態度は絶対にアカン。 

利用者が本音を言うとは限らない。
みな、自分の立場が弱いと思っている。
イジワルされたくない。
医療従事者は心得ておくべきだ。