「長生きしたくない」
検診にきた津山さんは84歳。
人間とは矛盾に満ちた存在だ。
「でも明日死んだら困るでしょ?」
意地悪な質問をしてあげる。
津山さんは苦笑いを浮かべる。
「検診受けてるくらいやもんね」
意地悪な主治医は膝をぶたれる。
人の生死は不確定要素だ。
「いつかの死」だけが確定している。
10年先の終着点は遠すぎる。
くっきり見える到着点は怖すぎる。
人生の最終形はこれでいいのか?
後悔ないようジタバタした方がいい。
世の中受け身だとロクでもない。
暗いニュースばかりだ。
まだ見ぬ景色を探しにかかる。
すると思わぬ感動があるかもしれない。
「みなに迷惑をかけたくない」
長生きしたくない根拠の常套句。
津山さんは「お約束」を発した。
日本人は実に「みんな」が好きだ。
「誰に聞いたの?」
「みんなそう言っていた」
「みんな」は日本一有名な存在だ。
「誰に聞いたの?」
「みんなそう言っていた」
「みんな」は日本一有名な存在だ。
欧米では非常に希薄な感情だ。
尊厳死の根拠に「迷惑」がない。
個人主義だからこその尊厳死なのだ。
「みんな」のために死にかねない日本人。
危なっかしい。
尊厳死の議論がなかなか進んでいかない。
尊厳死の議論がなかなか進んでいかない。
やり残したことないようにしましょう。
健康面は医者に任せてOK!
一応納得して津山さんは帰宅した。