あと一日しかなかったら?

原崎さん86歳女性。
最近定期的に受診するようになった。
骨粗鬆症の薬を飲んでいる。
ボランティア活動に熱心だ。

「最近少し疲れてきたの」

「そんだけできたら充分でしょ」

すると原崎さんはじっとこちらを

見て、丁寧に話し出した。

「先生にお願いがあるんです」
「何でもどうぞ」
「私が弱ってきて、その時が来たら

静かに看取ってほしいんです」

全部理解できた。

荷物整理をしていたら、50代のときに
書いた遺言書が出てきたそうだ。
今の考えと全く同じだったそうだ。
30年前に仕上げているとは

当時としては先進的だ。

今回、改めてエンディングノートを
したためた。

終の主治医として選んでくれたようだ。

「ええオチにしたげますよ」

「ああ、よかった」

涙目で喜んでくれた。
お陰でボランティアに精を出せる。

やりたいことに集中できる。

終着点を決定することで自由を得る。
死を身近に感じておくことで、
自分の真の物語が描けるのかも…

逃げるから怖くなる

季節の変わり目に頭がモヤモヤする。
岡田さんは84歳の女性。
めまいの一種と捉えている。

表情の硬さはさながら鉄仮面だ。
「笑った方がいいですよ」
対処法を提案した。

かなり前に仕入れた知見だ。

笑うから面白くなる。
面白いから笑うのではない。

逃げるから怖くなる、というのもある。
心理学用語で「アウトサイド・イン」
というそうだ。

もしかしたら表情を和らげると
モヤモヤがとれるかもしれない。
少なくとも緊張は取れるだろう。
有害な副作用は考えられない。
というわけで、笑顔を励行した。

「面白いことを想像するように」
岡田さんは困惑していた。
まあそう面白いこともないそうだ。
だからネタをプレゼントした。

最近、家族が明るく過ごせるように、
朝の挨拶するときスキップで登場する。
家庭で、陽気な父親をやっている。

という告白をした。
このネタは、岡田さんと義娘、
師長にも大いにウケた。

気を良くした主治医は調子に乗り、
スキップで部屋をあとにした。

しばらく岡田さんは、この絵で
思い出し笑いできるだろう。
サービス業を実践している。

通勤ダイエット

早い話が
通勤というルーチンを利用しろ

ということだ。

鳥山さんは72歳の男性。

高血圧があり、少し腎臓が悪い。

通院10年だが、すこぶる良好だ。

鳥山さんは通勤を”ジム化”している。
往復1時間の車内は立っている。
乗り換えをせず、30分歩いて出勤。
出社するや否や腕立て伏せ100回。

それを40年間続けている。

晩酌の量もきっちり決まっている。

「塩分を少し減らしましょう」
助言すると、昼の弁当のおかずを

3分の1残すようになった。

とにかくすぐに行動してくれる。

お手本のような患者さんだ。

指示にしっかり従ってくれるから

絶対に助けなければならない!

体育系はもう十分だ。

文化系の課題を出すことにした。

読書嫌いの鳥山さんの通勤…

そうだ!音声を利用しよう!
通勤中にイヤホンを使って英語を

勉強するよう課題を出した。

厳しい主治医だと思う。

72歳でまだ通勤しているのだ。
十分に偉い。
人生時間をとことん有効利用する。
スマホで遊んでる場合じゃないよ!