4年に一度じゃない。一年に二度だ。

「インフレで大変だったのよ」

吉田さん(69歳)は経済学者ではない。
インフルエンザの言い間違いだ。

今年はめずらしく夏に流行した。
ワールドカップの影響とも
推察されている。
来日した南半球の人たちが
運んできたのかもしれない。

吉田さんの息子と孫がかかった。

「よかったじゃないですか」
「全然よくないわよ」
「思い出深い夏になったじゃ
ないですか」
「よくもそんな呑気なことを!」
膝を叩かれる。

もちろん、治ったからこそ
気軽に言えるのだが…

のんべんだらりと過ごす毎日は
一瞬で過ぎ去る。
気づいたら何も残っていない。
一回きりの人生では?

夏のインフルエンザ。
一生忘れないだろう。

家族で濃密な時間を共有できる病。
それも悪くない。

次に流行るインフルの予防接種で
来院した吉田さん。
「じゃあ注射やめとこうかな」

とはならない。
やっぱりしんどいのは嫌だから。

ONE FOR ALL ALL FOR ONE

早い話が
家族の健康は総合点が一定しているのでは
ということだ。

家族が重い病を患う。
家族間での関係性に変化が起こる。
ドミノ倒し的にメンバーが病気になる
ということは滅多にない。

一緒に学ぶことで養生するようになる。
「自分が倒れてはいけない」
気持ちが免疫力を高めているのか?
実際、目の色が変わる家族は多い。
そして、以前より明らかに元気になる。

そういうケースは多い。

子どもが先に逝ってしまう。
その悲しみは言葉にできない。
しかし、数年後不思議なほど元気になる。
子どもの分まで生きてやろう!

人生を大切に生きている人は少なくない。

家族の健康は総合点が一定する。
勝手にそんな気がしている。

勿論当てはまらないケースもあるだろう。

人間は「関係」の中で生きている。
相手の状態に応じて自然と立ち回る。

親密な家族ほどバランスしている。

荒尾さん(78歳女性)は肥満している。
現在体重が78kgだ。
結婚当初、体重は45kgだったそうだ。
「詐欺ですね」
主治医は本音をつい吐いてしまう。
結婚当初、夫の体重が78kgだった。
夫はここ数年患っている。
現在体重は45kgしかないそうだ。
夫婦の体重が入れ替わったのだ!
総合点一定してるやんか…