
君塚さんは70歳男性。
酒好きで治療にも非協力的。
ようやく心が通い出した。
糖尿の数値もみるみる改善してきた。
「素晴らしい!これで生き延びた!」
ホメていると意外な告白をしてきた。
君塚さん曰く一度死んでいるそうだ…
高校時代に大きな事故に遭った。
脳が飛び出ていたそうだ。
救急隊も完全にあきらめていた。
一命は取り留めたが、3年間入院。
その告白に驚いた。
今の姿は日焼けした普通のおっちゃん。
よく見ると少し傷痕がわかる程度だ。
「先生は信じないと思うけど
母親が治してくれたんです」
母は息子を助けたい一心で、
色んなことをしたそうだ。
山に登り、呪術的なお祈りもした。
そして肉断ち、油断ちもした。
生涯に渡ったそうだ。
母親は晩年認知症を患っていた。
それでも味噌汁を食べるときに、
油揚げだけ除けていたそうだ。
その話にはグッときた。
「先生にこんな話は変ですよね」
そんなことはない。
3年の入院は壮絶な事故を物語る。
しかも50年以上前の医療のレベルだ。
母の念は有形無形に働いたはずだ。
「そう言えば、君塚さんの血糖値が
悪い時、寝苦しいんですよ。
お母さんに首絞められてるのかも。
息子治せ~ゆうて」
君塚さんは笑っている。
医学は間違いなく科学だ。
だけど、医療は治ってナンボ。
オカルトでも何でも治ればいい。