社員の咳が止まらない


「社員の咳が止まらない」

シンガポールで活躍している後輩がいる。
一昨日後輩から突然相談を受けた。

社員はケニア支社で働いている
39歳の男性だ。
ケニアでも新コロは流行しつつある。
医療レベルは決して高くない。
チャンスがあったので帰国した。

帰国時咳があったが、発熱していない
という理由で検査されなかった。
帰国者は2週間外出制限される。

会社が用意した渋谷のホテルだ。
別に外出しても咎められない。
シンガポールなら国外追放らしい。
後輩は違いに驚いていた。

社員の咳は日に日にひどくなっている。
事情を説明するとすべての医療機関に
診療を断られたそうだ。

断る気持ちはわからなくもない。

「先輩診てやってもらえませんか?」
それほど付き合いのない後輩だが
断るわけにはいかない。
とりあえず、直接電話で話すことにした。

会話中もしょっちゅう咳をしていた。
乾いた咳だ。
階段の上り下りは平気らしい。
眠りが妨げられることもない。
食欲その他問題なし。

もともと気管支喘息がある。
季節性のアレルギーもある。

「それアレルギーの咳やわ。
コロナの可能性は低いわ。
典型的でないし、何より
君の年齢なら確実に治る」
「ありがとうございます」


お礼の声に、大量の安堵感が溢れていた。
ついでに、喘息の薬の受取り方も
伝授しておいた(ここには書けない)。

発熱後、4日間静かに家で過ごす?
下手したら死んででしまう。

薬以外にも医者ができることは
ゴマンとある。

雑談力の作り方

早い話が
もはや言葉がいらない二人でも
会話はあった方がいい
ということだ。

「最近鼻水が止まったんです」
佐藤さんは76歳の女性。

夫の認知症が進み、施設に入った。
いつも床で寝ていた佐藤さんは、
夫のベッドで寝るようになった。
途端に鼻水が止まった。

佐藤さんの家は古い家屋だ。
低い所にアレルギーの原因物質が
うようよしているのかもしれない。

「旦那に対するアレルギーでは?」
意地悪に訊いてみると、
「そうかもしれないですね」
と佐藤さんは笑いながら答えた。

施設では話し相手が少ない。
夫の認知症はどんどん進んでいる。
最近、自分の名前もあやしいらしい。

「話のネタがなくて困るんです」

以前、写真を持っていくよう助言した。
佐藤さんは忠実に守っている。
二人で旅行した写真を見ながら、
当時を思い出して会話するそうだ。

でも、すぐに話しが尽きてしまう。

「僕のこと憶えてくれてるかな?
会いたいって言っておいて下さい」
「今日は先生のとこに行く
って主人にも言ってあります」
とのこと。

診療のあと夫の所へ行く佐藤さん。
会話のネタを仕込んでおいた。
鼻水が止まったことを報告するよう
助言した。

「あなたがいなくなったお陰よ。
ありがとう」

って感謝を伝えるように、と。

少々ブラックかな…
感謝だからよし、としておこう。