道徳と性欲

昔、俳優の故松方弘樹は、「千人斬り」との異名を持っていた。
千人の女性と肉体関係を持ったということである。
男性は女性遍歴が「武勇伝」のように扱われていた。
同じことを女性がした場合、『痴人の愛』にて表現された言葉だが「公衆便所」と呼ばれた。

性行為の問題において女性は圧倒的に不利だ。避妊具を使うタイミングも大抵、男が決める。
STD(性行為感染症)の代表に“HPV(ヒトパピローマウイルス)”感染がある。
HPV感染と強い因果関係があるとされている「子宮頸がん」は女性特有のものである(実際は男性にも尖圭コンジローマや陰茎ガンなどもあるが、圧倒的に少ない)。

少し古いデータだが、2015年10代で出産した女性は1,929人で、10代での人工中絶は16,113人にのぼったそうだ。
人工中絶に対する偏見は相変わらず強い。
受診した医院の医師や看護師から「遊んでたんだろ」などと中傷されることもあるらしい。
「道徳の先生じゃないのだから、淡々と仕事しなさい」と言いたい。
事情はさまざまだ。間違いないのは「望まない妊娠」という事実だけだ。みんな傷ついているのだ。
百歩譲って、遊んでいた、ほんの好奇心だったとしよう。もっと進んで、好色だったとしよう。それでも良いではないか。
性欲は「本能」であり、「煩悩」だ。大小の差こそあれ、10代の女の子にも備わっている。
先にある「病」を憂いて煩悩を否定するならば、「生活習慣病」につながる「グルメ」も非難すべきだ。

望まれず産まれてきた「命」が粗末に扱われ、凄惨な事件を起こしているケースも毎日のように報道されている。
大人目線で安易な行動を非難するなら、性欲を惹起(じゃっき)するようなグラビア雑誌や、風俗業全て廃止すべきだ。
本気で子供を、命を守るなら大人も自制すべきだと思う。社会全体で守る必要がある。
妊娠中絶の是非は、宗教的にも議論が尽きない。アメリカ南部では妊娠中絶医がキリスト教徒に射殺されている。
「禁断の果実」を食べてしまうのが人間であり、「業」ともいえる。

中絶、HPVワクチン、アフターピル、性教育…必ずしも個人の意見としてすべてに賛成しているわけではない。
しかし、極力偏見を排して考え抜こうと思っている。
起こってしまった問題に対しては、実践的な対応をした上で、未来につながる教育をすべきではないだろうか。

原田文植