どうらく爺ちゃん

末期の前立腺癌と間質性肺炎。
「これ以上は治療できません」
前川さん(84歳)はさじを投げられた。

酸素を引きづりながら外来へやって来た。
「歳ですからね」
そう言う前川さんに悲壮感はなかった。

以後、大体週一でうちに通院している。

前川さんは来月89歳になる。
なぜか酸素も外している。
病状は全く悪化していない。
いや、むしろ元気になっている。
肺炎などを起こしても必ず改善する。
不死鳥のごとく!

前川さんは毎週土曜日デートをする。
70代の未亡人と。
寿司を食べた後、カラオケスナックへ。
カラオケスナックの店長もうちの患者だ。
詳細を逐一教えてくれる。
(至る所にスパイ活動員が潜伏している)

未亡人は一人で大酒を飲み歌うそうだ。
前川さんが眠くなって帰った後も…

「けっこう遣うでしょ?」
前川さんに訊いてみた。
「月に7~8万ですかね」
それ位はかかるだろう。
日曜日はこれまたルーチン、場外馬券場。

若い頃は一升酒に競馬。
ビリヤードもプロ級の腕前だそうだ。
自社ビルには本格的カラオケ設備もある。
石原裕次郎が十八番(おはこ)だ。

「女遊び」だけはしなかったそうだ。
超愛妻家だったらしい。
妻に先立たれたときは大変だったそうだ。
後を追うのでは、と周囲も心配した。

今でも、奥さんのことを話すとき、
前川さんの瞳は少年のようだ。

「奥さん怒ってるんじゃないですか?」
前川さんを少しからかってみた。
「そんなんじゃないですよ」
と前川さんは照れながら弁解する。
「むこうが私を利用しているだけですよ」

イイと思う。
いっぱい働いて稼いできたんだから。
残りの人生好きなことだけやればいい。

前川会長はまだまだ死にそうにない。

 

よろず相談所 One Love
日本メディカルコーチング研究所
所長: 原田文植

 

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