大野さん(72歳)は施設に入所している。
脳卒中後遺症で左半身麻痺。
何年も車椅子生活を送っている。
「飯が食えねえんだよ」
ほぼ口ぐせのように毎回苦情を言う。
「食べたいの?」
「食べたいよ。
だけど喉を通っていかないんだよ」
実は2年間くらいこんな感じだ。
多分施設のご飯が美味しくないのだ。
「食べんでいいよ」
「えッ?」
「食べなくていいよ」
「食べなきゃ死ぬだろ?」
「生きてるやん」
大野さんは重度の糖尿病だった。
今は治っている。
食べないからだ。
血圧も下がっている。
食べないからだ。
イライラは増えている。
食べないからだ。
食べないと言いながらも
栄養状態は悪くない。
定期的に採血している。
最低限は食っているのだ。
どうせ食わない。
それなら「食わなきゃ」という
ストレスがない方が良い。
食べないと元気が出ない。
それもある種の洗脳だ。
大野さんの世代は食えなかった時代だ。
食べることは幸せの証だ。
脱洗脳は容易ではない。
「前より健康になってることが証拠よ。
タモリもほとんど食わないらしいよ。
今日も最低限の殺生ですんだ。
これで行こう」
有名人の権威を借りることにした。
「先生にはかなわねえなあ。
痛み止め出しといてね」
大野さんは苦笑いをしていた。
よろず相談所 One Love
日本メディカルコーチング研究所
所長: 原田文植
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