「伝える」義務


「もういいんです」
図書館マニアで、図書館の写真集まで出している患者さんが言った。
彼は「小脳変性症」という難病で、徐々に呂律が悪くなり、バランス感覚も悪化してきている。今回はそれに加えて少し痩せた様子だった。気力低下から食欲も落ちているのだろうと思われる。
「アカンアカン。まだまだ用事ありますよ」
常々考えていることを伝えた。
「伝える」ことができる間は伝え続ける必要がある、と思っている。
自分の思考は果たして自分一人のものなのだろうか?
自分の思考は一体どうやって成り立っているのか?
生まれてこのかた、親兄弟をはじめ、多数の人々の影響を受けて、真似して出来上がっている。人間だけでなく書物をはじめ媒体、映像や環境から意識は作られている。自分一人の所有物と言っていいのだろうか。他者に「伝える」ことでその人間は存在する。つまり「関係」があってはじめて「存在」しているといえるのではないだろうか?
余談であるが、うつ病の発症原因の一つとして「自分一人の世界に入りすぎる」ということがあると思う。自分のことしか考えないから余計辛くなってしまうのである。人間というのは他人を助けたり、自分より弱い他者を探すことによって成り立っているのではないかということである。
たとえ身体の状態が悪化していったとしても、意識があるのであれば、伝える手段は数多く残されている。現代のスペックを使えば。すべての人は、頭の中の内容を他者に伝えて、その知恵を伝授する義務があると思っている。
実際、この患者さんのお陰で、私自身多くの「学び」を得させてもらっている。
「伝える」こと、それは決して贈与税のかかることのない資産なのだ。

 

日本メディカルコーチング研究所
所長: 原田文植

 

■原田文植 著作
「病は口ぐせで治る!」
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