岩本さん(81歳)は昨年妻を亡くした。
岩本さんは夫婦で居酒屋を経営していた。
妻が30年前脳卒中を起こした。
それ以来、妻は車いすだった。
岩本さんは厨房を使って調理していた。
岩本さんが介助し、妻に食べさせていた。
岩本さんは昔、「ワル」だったらしい。
よく飲み、よく遊び、妻に苦労をかけた。
介護は罪滅ぼしだと言っていた。
妻の介護は30年にのぼった。
その間一滴も酒を口にしていない。
岩本さん本人も大病を患っている。
喉頭がんで声帯摘出している。
食道発声だが、しっかりしゃべっている。
6年前食道がんになったときは覚悟した。
しかし、不屈だ。食道がんも克服した。
術後6年無事に過ごした。
東大病院で卒業証書をもらった。
その矢先に妻が突然亡くなった。
近隣は岩本さんの今後を心配した。
果たして独居生活に堪えられるか?
杞憂だった。
元気にニコニコ過ごしている。
岩本さんはウチの子も可愛がってくれる。
ウチの妻も岩崎さんの大ファンだ。
今日外来を受診してきた。
「大丈夫?寂しくない?」
と訊いたら、
「毎日線香を20本つけている」
と答えた。
煙の香りに妻を感じ続けているのだろう。
実はこのようなケースは少なくない。
生前しっかり伴侶を思いやる。
悔いがないのだろう。
伴侶を失っても元気に過ごしている。
仲睦まじい夫婦ほど杞憂となる。
こちらの心配が。
逆に生前伴侶に罵詈雑言し、愚痴ばかり、
そういう人の方が鬱になりやすい。
生きている間に供養しよう。
今朝のブログに書いた。
「供養」の語源はサンスクリット語だ。
本来「尊敬」という意味だそうだ。
日本に伝来し「死者を弔う」という
意味になった。
自戒を込めて繰り返す。
死んでからでは遅いのだ。
生きている間に供養しようと思う。
日本メディカルコーチング研究所
所長:原田文植