自宅全焼

英国では今年から「孤独担当大臣」が設置されることになった。
人口6,560万人の英国には「孤独」を感じている人が900万人以上いるとされている。
友人や親戚と1カ月以上会話していないお年寄りは約20万人もいるらしい。
今後、研究や統計を踏まえ、孤独をなくす政策が練られるそうだ。

「社会的つながり」の喪失が「認知症」やその他の疾患の原因になる。
そのような報告がたくさん出ている。
「孤独」が「国家的損失」につながるとの認識が英国でなされたのだろう。

柴山さん(仮名、89歳、女性)は自宅が二度焼けたそうだ。
二度とも戦時中。米軍の「焼夷弾」によって。
壮絶な体験を聴かされ、絶句するしかなかった。

家族のうち、男性はみな徴兵されていたから、母と妹の女3人で逃げたらしい。
はじめは清澄庭園に逃げ込んだ。
しかし、木が多いので燃えやすいのではないか。
結局、清洲橋の橋の下で親子三人一晩過ごしたらしい。
帰ったら自宅は丸焼けだったそうだ。

「ショックだったでしょう」
と訊くと、
「周りも皆、同じようなものだったし、落ち込んでいる暇がなかった」
と応えられた。

柴山さんは戦争時代の体験をしばらくお話された後、
「でも今の方が嫌」
とおっしゃった。
戦中戦後はみんな大変だったので、協力し合った。
みな貧しかったし、同じような暮らしをしていた。
対して、今は格差はあるし、他の人の暮らしぶりが想像もつかない。
それが、気味が悪いそうだ。

「人間は社会的動物である」とはアリストテレスの言葉だ。
89歳の先輩に、二度の自宅全焼より嫌な世の中に住んでいると思わせて良いわけがない。

 

日本メディカルコーチング研究所
よろず相談所 One Love
所長: 原田文植