下町の互助精神

下町には複数の「生活習慣病」を抱えている患者さんが少なくない。74歳の男性Oさんもそんな患者さんの一人だ。

あるランチタイム、地元の蕎麦屋さんでたまたまOさんに会った。Oさんが食していたのは、カツ丼ときつねそば。

その健啖ぶりに驚いたと同時に、なるほど、血糖値や脂質の数値が上がるはずだ。

後日、外来受診したときに、そのことをチクリとやった。

「よう食べはりますねえ。もりそば一つで十分お腹一杯になりましたよ」と伝えたところ、Oさんの答えはこうだった。

「オレもそうだよ。けど、お店で食べるときは1000円ぐらい遣ってあげなきゃ悪いかな、って思うんだよね。」

鈍器で殴られたような気がした。Oさんは「互助」という価値を優先していたのだ。盲点だった。

少し話がそれるかもしれないが、下町は滅多に値下げをしない。別の形でサービスをしてでも自分の仕事の交換価値を下げない。

廉価商売をする大型スーパーが入ってきて近隣のスーパーは戦々恐々となる。しかし、品質で勝負し、値段は下げずに対抗する。

地元の人に訊いてみても、「○○(大型スーパー)はモノがよくないからね。」との返事。

みんなで既存のお店を守っているのだ。もちろん、いつも勝てるとは限らない。

「価格競争」は最後に「共倒れ」が待っているだけ。生活水準で賃金が決定される資本主義は、安物買いをする人間の賃金は上がってこないシステムだ。

偉そうなことを言っているが、今日も某量販店で、エアコンを想定外の安さで買えて喜んでいる。

誰かが泣いてるからこの値段なのだろう。一応、罪悪感は感じております…

システムを変えるには時間がかかる。主治医としてはせいぜい、Oさんの「江戸っ子の気風(きっぷ)」と「健康」を両立させてあげることに尽力するのみ。

 

原田文植

 

■原田文植 著作
「病は口ぐせで治る!」
フォレスト出版

病は口ぐせで治る!原田文植
Amazon Kindle