妄想マニア

「最悪な気分、面倒くさい」

武部さん(60歳)はこういう物言いだ。

腹部エコー検査をした。
武部さんは酒飲みだ。
肝機能の数値が少々悪かった。
肝臓はきれいだった。
周囲の臓器も問題なかった。
しかし、子宮内に腫瘍が見つかった。
もちろん無症状だ。

で、武部さんは冒頭の言葉を発した。

落胆する武部さんに伝えた。
「これをラッキーと言わずどうする?
棚ボタで見つかったなんて超幸運」

「でも手術とか面倒くさいでしょ」

「その段階じゃないでしょ!
悪性かどうかもまだわからんのに!

妄想は止めよう。時間のムダですよ」

「だってえ…不安なんだもん」

「検査は早期発見が目的でしょ?
正常でしたって言われることだけを

目的にするなら受けたらアカンわ

言葉で最悪の状況を固定化する。
そういう患者さんは少なくない。
一事が万事そういう処世だ。
「最悪の事態を想定しているだけ」
そういう詭弁を使う。
想定だけを繰り返す人たちに問いたい。
「時間」には価値がないのか?

ムダな妄想で消費する時間。

          極力減らした方がいいのではないか。
人生時間は有限なのだから。
「行動」にしか意味はない。
危機管理は行動だ。妄想は?

ただの妄想だ。

最後に武部さんにこう伝えた。
「早期発見できるのは日本だから。
 検査機器の精度と進歩に感謝しなきゃ。
そして、近隣にここまで頼りになる
病院があるのは台東区だから。
地の利と、時代に感謝すべきですよ」
武部さんは渋々納得したようだ。

後日、武部さんから自筆の手紙が届いた。
婦人科受診の結果報告だ。
おそるおそる封を開いた。
「何もなかったです。ホッとしました」
達筆で感謝の言葉が綴られていた。

悪性だったらどんな言葉をかけるか?
用意するわけがない。
適切な「出たとこ勝負」をするだけ。
勝負せずに済んでよかった。
主治医の方が、よりホッとしているのだ…