北島さんはいつも妻の心配をしている。
外来でも妻の話ばかり。
風邪で受診した夫、北島さん。
自分のことはさておき、妻である。
「妻も風邪で明日受診する」
そうだ。
今日でなくて明日?
妻は「今日は用事がある」そうだ…
姉さん女房(75歳)は元女優。
レコードを出している歌手でもある。
今も、いわゆる「美人」さんだ。
叱られることを覚悟で偏見を。
美人は「かまってちゃん」が多い。
いつも外来では不定愁訴の嵐だ。
「はいはい、なるほどなるほど」
「ちゃんと、聴いてよ!」
「ちゃんと、聴いてよ!」
主治医の冷たい医療にスネる元女優。
翌日、姉さん女房が受診してきた。
いつもと様子が違う。
夫の話ばかりしている。
夫婦って面白いと思う。
夫の心配をすることで元気になったのだ。
「心配する」とは実に良薬なのだ。
「主人、大丈夫ですかね?」
「大丈夫、ウチの家族も全滅やったよ」
風邪が流行っているという話をした。
「先生なのにダメじゃない!」
患者さんは医者の不養生に手厳しい。
「たまに風邪引けばいいのです。
それで自力で治せばいいのです」
「スパルタなのね。心配しないの?」
「内心ヒヤヒヤ。演技上手いんです。
かまってちゃんを作らないためにね」
と得意げに語ってハッと我に返った。
プロの前やった…
幸い、ここは素通りしてくれた。
主治医も患者も「天然」だったようだ…
幸い、ここは素通りしてくれた。
主治医も患者も「天然」だったようだ…