まだ何かできることがある

ある末期ガン患者のお話。
夜通しナースコールを押しては
「死なせてくれ」
とわめく。

ナースたちはうんざりしていた。
もう長くないだろう
それだけがナースたちの慰めだった。
次第に無視するようになったそうだ。
医師もしばらく見に来なくなっていた。

ある日、看護学生が当直していた。
その患者のナースコールに対応した。
学生はどうしていいかわからない。
泣きながら患者さんの足を洗った。

盲目的な行為だった。
看護学生は泣きながら
「少しは気持ちよくなりましたか?」
と訊いた。
その患者は暫く黙ってから
「もうナースコールは止める」
とポツリと漏らした。

2週間後、患者は静かに永眠した。

かなり以前に聴いた実話だ。

緩和医療はかなり発達した。
患者さんが、院内でここまで苦しむ
ケースは少ないかもしれない。
形を変え、似たケースは存在する。

外からは見えない認知症患者の苦悩。
痛み以外の苦しみや介護者の心労。

黙殺しがちな問題は山積みだ。
看護学生から学ばねばならない。

「医療者としてできることは、
まだあるかもしれない」

その言葉を失ってはいけないと
常に言い聞かせている。