ネポティズムとは?

「ネポティズム」という言葉をご存知か?
日本語に訳すと「縁故主義」である。
少し悪意のある訳だと「身内びいき」となる。
野党が懸命に追求している「モリカケ問題」もネポティズムに対する批判だ。
「ネポティズムはズルいよ」
と言っているわけだ。

今に始まったことではない。昔からずっとネポティズムなのだ。
政治家も医者も世襲ばっかり。才能で勝負、の芸能界も見渡せばネポティズム。
学歴社会もネポティズム。貧困もある意味ネポティズムだ。
履かせてもらっている「下駄」はすべてネポティズムだ。

ふと思った。
この世は全てネポティズムなのではないだろうか?
目に映る全てのコトは「縁故」でやってきたものばかり。
純粋に独力で得たものなんて一つもないはずだ。
思考している頭の中身も「縁故」でできている。親の縁故、教師の縁故、友人の縁故…

大多数の人がフェアでないと感じる「縁故」が「ネポティズム」であり、批判対象となるのだ。
線引きは難しい。
人のふり見てわがふり直そう。

 

原田文植




ケンカ両成敗

『The Rhetoric』という本が予想外におもしろかった。正直「ツッコミどころ」満載だが、ハーバードで非常に売れている、とのふれこみもまんざらブラフでもなさそうだ。分厚いが読みやすい。

特に注目したのは、「議論」に関する分析だ。
議論をする際、「時制に注目しろ」という点だ。
議論の際、「過去形」を用いるときには、非難や批判をすることが多いらしい。
たしかに「前回もそうだった」とか。えてして失敗例として使われることが多い。議論の場に限れば、その傾向はありそうだ。
「現在形」を使用する時には「信念」に基づいた主張が語られるとのこと。腑に落ちた!
「それは常識じゃないか」とか「人間だもの」なんてまさにそう。
結局「未来形」だけが、発展的な議論につながるらしい。「で、どないすんねん?(So what?)」ようやく「案」や「策」が出てくる感じがする。
つまり、議論したけりゃ、「未来形」で話せ!
ということだ。

なるほど、今回のワールドカップ。
日本対ポーランドの試合。日本は敗戦したが、決勝リーグに進めるという結果を得た。これは本来喜ばしいはずのファクト。しかし、日本のとった戦術について賛否が割れている(なんとなく議論されている)。
その1
勝てば官軍。スポーツとしてというより、勝つことに意義がある。「勝利」を大切に考えている。
その2
スポーツとは最後まで、全力で、「フェアプレー精神」で一生懸命やることこそ重要だ、と考えている。
この二つは、まさに「信念」の相違だ。
ここで、「フェアプレイとは何か?」をいくら語っても、それは「信念」を語っているにすぎない。
前述の書物に照らし合わせれば、議論になりにくいし、進展は望みがたい。「信念」をいじるのは、消耗戦になりがちだ。キリスト教徒をイスラム教徒に改宗させるようなものだ(オリジンはどちらも新約聖書なので、決してできなくはないのだろうけれども…)。
いずれにせよ、ケンカが生じる可能性が高い。ケンカ好き同士がやる分には「どうぞご勝手に」、であるが、こちとら医者である。
ケンカはアドレナリンが出て、血圧と血糖値が上がる!お願い、ケンカせんといて。だ。
どうせ、これからも四年毎に続くワールドカップだ。
ワールドカップの未来?サッカーの未来?国際試合の未来?戦いの未来?人間の未来?宇宙の未来?
そんなことについて話すきっかけになればいいのにね。

 

日本メディカルコーチング研究所
よろず相談所 ONE LOVE
所長: 原田文植

 


男やもめと、未亡人

多くの高齢患者さんと接してるおかげで、貴重な経験をする機会も多い。
そのうちの一つが、未亡人と男やもめの カップリングだ。何組かカップルを誕生させている。
入籍するところまではいかないが、半同棲状態ぐらいはザラである。
下町は口が悪い。近所の噂も気になる。 周囲の目を気にしてこそこそ付き合っているケースも少なくない。
三角関係もたまにはあるが、「愛憎入り交じる泥沼」は幸い経験していない。

どちらかに先立たれることも当然ある。 ある男性患者:清水さん(仮名、84歳)は肺がんを患っていた。お目当ての女性:天野さん(仮名、79歳)もうちの患者さん。天野さんも大病しているが、カラオケ、ダンス大会に出場する活動的な、小柄でキュートな女性だ。
晴れて付き合うことになった清水さんは医師も驚くほど回復した。
某病院で予命宣告(なんと3ヶ月!!)されたが、のらりくらり3年近くもった。

しかし最後の日は訪れる。
天野さんが清水さんの自宅を訪問したときに清水さんは死んでいた。第一発見者だったから色々大変だった。

先日、天野さんが外来で、こう言っていた。
「死に水取らされちゃったよ。実の娘なんて本当薄情なもんよ。淡々と全部片づけていったわ。ひとつだけ悔しいことがあるんだよね。毎日晩酌してた時に使ってた可愛いお猪口。ちょうだい、って言ったら、俺が死んだら形見にやるよって言ってたのに。娘がきっと全部燃やしちゃっただろうなあ。欲しかったなあ、あのお猪口」
「欲しかったなあのお猪口」という台詞が今も頭の中で、残響している。

原田文植