ぐっすり眠りたい

「眠りが浅いんです」
という石川さんは85歳男性。

不眠症は大きく二種類に大別される。
寝入ることができない『入眠障害』。
途中で起きてしまう『途中覚醒』。


ときに
「眠る資格なし」
と不眠症認定に厳しい主治医なので、
患者さんは色んな訴え方をする。

「浅い?測ったんか?」
と言いたい気持ちをグッと堪え、
話をよく聴いてあげる。

石川さんは
「夢をよく見るんですよ」
とのこと。
「浅い眠り」の根拠らしい…

「藤子不二雄Aは夢の内容を
せっせと漫画に描くそうです。
石川さんと同い年ですよ」

と目くらましのような逸話を
話してお茶を濁す。

石川んさんと藤子不二雄Aが
同い年であることを知っている
自分が誇らしい。

石川さん宅には小鳥が何羽もいる。
一部屋丸ごと使って飼育している。
一度拝見したが圧巻だった。
ご自身が世話をしている。
小鳥たちは石川さんの生きがいだ。

「そういえば今朝の地震大きかったけど、
小鳥たち騒いだんじゃない?」


震度4の地震があった日だ。
うちのビルもかなり揺れた。

「えっ、地震あったんですか?」

気づかんかったんかい!


問診は大切だ、というお話。

悩まない決意

内山さんは70歳の女性。
高血圧と高脂血症の定期受診。
今年初めての受診だ。

「今年もよろしくお願いします」
少し声が変だ。
本人いわく、風邪の治りかけ。

「薬ほしい?」
訊いてみた。

数日前から風邪の兆候があった。
自力で治すか受診するか悩んだ。
悩んだ結果、
自力で治すことにした。

結局、時間がかかり、今に至る。

つまり2週間ほどかかっている。

「どちらがいいんでしょうか?」
「何と何?」
「早めの受診か、自力で治すか?」
「どっちでもええと思いますよ。
悩んでる時間だけが不要ですね」


風邪ごとき…
自力で治そうとするのは当然だ。
でも医者に来たっていい。
たまにはこじらすこともある。
でも悩んでる時間がもったいない。

意外と人間はこんな選択に貴重な
時間を使っているのかもしれない。


有限な人生時間。
一秒も悩まないと心に決めた方がいい。

大盛り無料

宅配弁当の鈴木さん。
当院でも注文している。
安くて美味しいと評判だ。
家族経営をしている。

最近店主が大腸がんで亡くなった。
心配したが残った家族、妻(70)と
息子(42)で経営継続している。

「最近お弁当のご飯多くない?」
「そうよねえ!」
「息子がご飯を盛ってるのかな?」
「若いから自分の分量なのよ!」

スタッフの会話が聴こえてきた。

別室から参入した。
「お母さんとちゃいますか?」
突然参入してきた医者に驚いた。

持論を展開した。

ご飯を盛っているのは母親だ。
以前は弁当作りにノータッチだった。
主人が死んで母も参加した。
大抵男はケチだ。
お母さんの方がご飯を多く盛る。

「そうかもしれない!」
スタッフは納得して笑っていた。

鈴木さんは自分の患者さんだ。
ケロッと乳がんを克服した人だ。
茶道の先生もしている。
ということは「おもてなし」を
熟知している。

気性を知っているからわかる。

がんばれ!