(笑)

小山さんは85歳独居女性。
家の中は「江戸」だらけ。
提灯や江戸家具、歌舞伎や相撲文字。
亡き夫の趣味と思しき任侠風味…

それに加えて、文化とは異なる
不思議な「明るさ」がある。
独居特有の「寂しさ」が薄い。
なぜだろう?

江戸の色彩は概してシックだ。
(花魁文化は別…)
色も「原色」という感じではない。
小山さんは倹約家なので電気も暗い。

理由がわかった。
そこら中に
「ユーモア」「笑」
という字があったのだ!


デイサービスで書いた作品
「いつも心にユーモアを」
「笑う門には福来たる」

壁にたくさん貼ってある。

「笑」「ユーモア」という字の持つ
ポテンシャルはあなどれない。

嘘だと思うなら「笑」という字を
じっと見つめてみてほしい。
笑けてくるでしょう?

笑福亭笑瓶はラッキーだ!
「笑」が二個も入っている!
強力な芸名だ。

「診療所」も「診療笑」にしたら
楽しいかも…

注文まちがい

自分の思いを相手に伝える。
想像している以上に難しい。
相手の理解度が違うからだ。
それはIQとかそういう話ではない。
さまざまな先入観が入るからだ。

下島さんは76歳女性。
夫と蕎麦屋をしている。
朝から晩まで馬車馬のように働き、
家事もしっかりこなしている。

先日脊椎の圧迫骨折をした。
整形外科で診てもらっているが、
治療が長引いている印象だ。

「医者にしっかり伝えた?」
訊いてみた。
どこまで治してほしいか?
どう治りたいか?
仕事で相当動き回ること。

日常と仕事中の活動性も印象も
全く違う人は意外に多い。

下島さんもその一人だ。
それを知らない医者は下島さんを
「76歳女性の一症例」
として扱う可能性が高い。

「?」
な顔をしている下島さん。
こちらの質問の本当の意図が
下島さんに伝わっていないようだ。

「カツ丼を注文しているのに、
素うどん出てきたらお客さんは
怒るでしょ?」

ようやく理解できたようだ。

「自分は何を求めているか?」
を相手に伝えるのは簡単ではない。
よく知っておくべきだ。
でないと素うどんが出てくる。

厄介な痛み

口内炎…

ちっぽけな存在が人生のクオリティを
とてつもなく下げる。

しかも厄介な場所にできている…

内科医の仕事は「しゃべり」が
大半を占める(はず…)。
しゃべるたびに傷口が疼く。

いつもより少し無口な主治医。
余計なことをしゃべらない分、
長い握手で胡麻化す。
患者さんの痛みに心底
「共感」できる日になった。


痛みにも「波」があるのがよくわかる。
対面する患者さんによって
痛みの「質」が変わるようだ。

交感神経の活動のせいか?
唾液分泌量と関係があるのかも。

これは「実際の痛み」なのか?
それとも「余韻」なのか?
それとも「恐怖」なのか?
得意の「忘却テク」も駆使する。

効果は?

あった。
いつもより治りが早い!

しかし、努力を水の泡にしかねない
予定が夜に入っている。
友人の結婚式の余興の打ち合わせ。
場所は赤坂の激辛韓国料理だ!
新婦が激辛好きゆえのチョイス。

「ええい、なるがままよ!」
傷口に塗りたくるように食った。
筆舌に尽くし難い痛み…
短時間で麻痺したようだ。
数分で舌好調。

一夜明けて今朝はほぼ完治。
重症度からすれば治癒速度は
かなり早い方だと思う。

「激辛塗りつけ療法」は
誰にも勧めるつもりはない。
検証するつもりもない。

痛みはもちろん嬉しくない。
だけど永遠の痛みなんてない。
その確信は大切。
自分で人体実験するのも大事。

どうせ他人には理解できないのだから…